最新記事

温暖化を加速させるホットハウス現象

2045年までに化石燃料全廃 カリフォルニア州知事への称賛と批判

CLIMATE LESSONS FROM CALIFORNIA

2018年9月12日(水)18時05分
マーク・ハーツガード(環境ジャーナリスト)

果たしてカリフォルニアは世界中の人を動かして、アメリカを反対の方向に引っ張るトランプ政権と共和党主導の連邦議会に対抗できるだろうか。自治体の指導者は十分な仕事をしているのか、それともまだ不十分なのか。人類の長期的な生存よりも目先の利益を優先する石油産業などの「気候破壊型産業」にはどう対処すべきなのか。

問題は山積している。そして残念ながら、現状ではブラウンも彼を批判する活動家もどちらも正しいと言えそうだ。対策の最も進んでいる地域でさえ、温暖化を食い止める水準には達していない。過去30年間、世界各国は本格的な対策を怠ってきた。そのため「2度未満」の目標を達成するためには、およそ政治的には不可能なほどのスピードで温暖化ガスの排出量を削減しなければならない。

SB350を法制化したカリフォルニアの場合、今後は再生可能エネルギーによる発電を増やしつつ、輸送部門の燃料をガソリンから電気に切り替えていくことになる。「電気自動車の充電ステーションは、30年までに現在のガソリンスタンド並みに普及する」と、SB350を起草したケビン・デレオン州上院議員は言う。

カリフォルニアは経済成長を達成しつつ、温暖化ガスの排出量を減らしてきた。デレオンに言わせれば、SB350の求める省エネ対策によって、断熱材の取り付けや古い家電製品の交換などで何十万もの雇用が創出されるはずだ。

とはいえ、道は険しい。ブラウンは15年の知事命令で、温暖化ガスの排出量を30年までに90年比で40%削減する目標を課している。「私たちは正しい方向に向かっている。しかし荷が重いのも事実だ」と言うのは知事側近のケン・アレックスだ。それでも世界中の人にカリフォルニアの取り組みを見てもらえば、「みんながもっと志を高くする必要があること、そして思った以上のことを実現できること」に気付いてもらえると、アレックスは言う。

環境問題をめぐっては、ブラウンのように進歩的で積極的な政治家にも鋭い批判が浴びせられるのが常だ。地球規模の大惨事を食い止めるには温暖化ガスの排出量を短期間で、大幅に削減しなければならない。そういう科学的真実を根拠に、環境保護派は対策の強化を訴える。

これに対して体制側が突き付けるのは政治と経済の現実だ。なるほど環境破壊につながるかもしれないが、今の社会は化石燃料に強く依存しており、これを性急に変えようとすれば激しい摩擦が生じるのは必至だ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、FRBに2.5%の利下げ要求 「数千億

ビジネス

英ポンド上昇、英中銀の金利軌道の明確化を好感

ワールド

スペースX「スターシップ」、試験飛行準備中に爆発 

ビジネス

ECB、インフレ目標達成に向けあらゆる努力継続=独
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:コメ高騰の真犯人
特集:コメ高騰の真犯人
2025年6月24日号(6/17発売)

なぜ米価は突然上がり、これからどうなるのか? コメ高騰の原因と「犯人」を探る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 2
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越しに見た「守り神」の正体
  • 3
    「アメリカにディズニー旅行」は夢のまた夢?...ディズニー・ワールドで1日遊ぶための費用が「高すぎる」と話題に
  • 4
    マスクが「時代遅れ」と呼んだ有人戦闘機F-35は、イ…
  • 5
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 6
    下品すぎる...法廷に現れた「胸元に視線集中」の過激…
  • 7
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測…
  • 8
    イタリアにある欧州最大の活火山が10年ぶりの大噴火.…
  • 9
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 10
    電光石火でイラン上空の制空権を奪取! 装備と戦略…
  • 1
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロットが指摘する、墜落したインド航空機の問題点
  • 2
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越しに見た「守り神」の正体
  • 3
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 4
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 5
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 6
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?.…
  • 7
    イタリアにある欧州最大の活火山が10年ぶりの大噴火.…
  • 8
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 9
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 10
    若者に大不評の「あの絵文字」...30代以上にはお馴染…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊の瞬間を捉えた「恐怖の映像」に広がる波紋
  • 3
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 4
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 5
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 6
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 7
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 8
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 9
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 10
    猫に育てられたピットブルが「完全に猫化」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中