最新記事

温暖化を加速させるホットハウス現象

2045年までに化石燃料全廃 カリフォルニア州知事への称賛と批判

CLIMATE LESSONS FROM CALIFORNIA

2018年9月12日(水)18時05分
マーク・ハーツガード(環境ジャーナリスト)

強大な敵に喧嘩を売る

環境団体エンバイロンメント・カリフォルニアを率いるダン・ジェイコブソンは、石油業界を相手に善戦しているとブラウンを評価する。

「州知事は恐れを知らない」と、ジェイコブソンは言う。「30年までに再生可能エネルギーの割合を50%まで増やし、電気自動車を500万台導入するといった対策を進めていけば、彼の政治生命に影響が出ないはずがない。さまざまな面で気候変動との戦いを続けつつ、ここまで石油業界とやり合っているだけで十分に立派だ」

石油業界と戦うには限度があると、デレオンも感じている。権力の面でも財力でも、敵が強大過ぎるのだ。「石油業界は2500万ドルを投じてSB350をつぶそうとした」とデレオンは言う。「それだけ出せば、かなりの人を動かせる」

だがデレオンは戦いをやめなかった。45年までに州内の電力を100%再生可能エネルギーで賄うとするSB100の草案を起草したのだ。

「今期の議会で最大の争点となる」と、7月にデレオンが予想したSB100は8月28日、会期末ぎりぎりで議会を通過。あとはブラウン州知事の署名を待つだけとなった(※)。

※9月10日、ブラウンはSB100の法案に署名した。

気温の上昇を2度に抑えたいなら、自治体レベルでも国家レベルでも、こうした戦いに何度でも、繰り返し勝利しなければならない。

ではどうしたら勝てるのか。GCASの参加団体にとって、いや、文明の未来を憂う全ての人にとって、これは最大の難問だろう。

政界内の駆け引きと外部の圧力、活動家の情熱と行政の現実主義、科学の真実と社会の現実。複雑に絡み合うさまざまな要素に、どう折り合いをつければいいのか。トランプ政権と「気候破壊型産業」の決意は固く、彼らが自発的に破壊をやめる気配はない。彼らを止めるのは、私たちの責任だ。

※本誌9/18号(9/11発売)「温暖化を加速させるホットハウス現象」特集はこちらからお買い求めになれます。

ニューズウィーク日本版 英語で学ぶ国際ニュース超入門
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年5月6日/13日号(4月30日発売)は「英語で学ぶ 国際ニュース超入門」特集。トランプ2.0/関税大戦争/ウクライナ和平/中国・台湾有事/北朝鮮/韓国新大統領……etc.

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

豪総選挙は与党が勝利、反トランプ追い風 首相続投は

ビジネス

バークシャー第1四半期、現金保有は過去最高 山火事

ビジネス

バフェット氏、トランプ関税批判 日本の5大商社株「

ビジネス

バフェット氏、バークシャーCEOを年末に退任 後任
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得る? JAXA宇宙研・藤本正樹所長にとことん聞いてみた
  • 2
    古代の遺跡で「動物と一緒に埋葬」された人骨を発見...「ペットとの温かい絆」とは言えない事情が
  • 3
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1位はアメリカ、2位は意外にも
  • 4
    野球ボールより大きい...中国の病院を訪れた女性、「…
  • 5
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単…
  • 6
    インドとパキスタンの戦力比と核使用の危険度
  • 7
    「2025年7月5日天体衝突説」拡散で意識に変化? JAX…
  • 8
    「すごく変な臭い」「顔がある」道端で発見した「謎…
  • 9
    なぜ運動で寿命が延びるのか?...ホルミシスと「タン…
  • 10
    海に「大量のマイクロプラスチック」が存在すること…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 8
    古代の遺跡で「動物と一緒に埋葬」された人骨を発見.…
  • 9
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が…
  • 10
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中