回収ボックスのその先で、プラスチックはどうなっている?――湘南貿易が挑む「見えるリサイクル」とは
湘南貿易ECORACYのイベントの様子
<プラスチックを「資源」として扱うには、何が必要なのか。横浜の機械商社・湘南貿易は、「見えるリサイクル」を通じて、新しい循環モデルを形づくろうとしている>
日本企業のたとえ小さな取り組みであっても、メディアが広く伝えていけば、共感を生み、新たなアイデアにつながり、社会課題の解決に近づいていく──。そのような発信の場をつくることをミッションに、ニューズウィーク日本版が立ち上げた「SDGsアワード」は今年、3年目を迎えました。
私たちは今年も、日本企業によるSDGsの取り組みを積極的に情報発信していきます。
ペットボトルやレジ袋など、暮らしのあらゆる場面にプラスチックは使われているが、一度役目を終えた多くは「ごみ」として見えない場所へと運ばれ、その後どうなるのかを意識する機会は少ない。
「リサイクル」という言葉は広く知られているものの、回収ボックスに入れた先の工程や、どんな製品に生まれ変わるのかまでイメージできる人は多くなく、「資源として循環させる」という発想が日常に根づきにくいのが現状だ。
一方で、プラスチックは適切に回収・再生すれば、繰り返し資源として利用できる素材である。
リサイクルを「頭で知る」だけでなく、目で見て、手で触れるなど「体験する」ことでこそ、資源循環の意味が自分ごととして理解されていくのではないか。
こうした問題意識を背景に、「リサイクルをより身近に、そして見える形で伝えること」の重要性を早くから意識してきた企業がある。横浜市を拠点とする機械商社・株式会社湘南貿易だ。
同社は、「Eco(エコ)」と「Literacy(リテラシー)」を掛け合わせた「ECORACY(エコラシー)」の名前で、廃プラスチックを活用したイベントやワークショップを展開し、再生・アップサイクルを体験型の学びに変える取り組みを進めている。
湘南貿易が取り組む「プラスチックごみ=資源」という新たな価値観を広げる挑戦とは、一体どのようなものなのか。
プラスチックごみを「資源」に変える、見えるリサイクル

株式会社湘南貿易は、横浜市を拠点にリサイクル関連装置などの輸入・販売を行う機械商社だ。
同社は長年、オーストリア・EREMA社のプラスチック再生機を日本に導入し、ペットボトルの再資源化を支えてきた経験から、リサイクルの現場と社会との間にある「見えない壁」を強く感じていたという。
リサイクルを推進する立場として、「自社の廃材を自社で循環させる仕組みをつくりたい」「廃プラスチックの価値をもっと高めたい」という思いも高まり、2008年頃にエコロジー事業部を立ち上げた。
同事業部を中心に、環境関連機器の輸入や技術提案を本格化させるなど、早い段階から環境分野を事業の柱としてきた。
2019年には、神奈川県内で廃プラスチックの再資源化をテーマにした出張型リサイクルワークショップを開始。ペットボトルキャップなどを粉砕・溶融してキーホルダーやアクセサリーにアップサイクルする一連の工程を、参加者が目の前で体験できるプログラムだ。
エコロジー事業部の庄司真唯氏は、「ごみが資源に生まれ変わる瞬間を体験してもらうことで、SDGs目標12『つくる責任 つかう責任』や目標4『質の高い教育をみんなに』の推進につなげていきたいと考えています」と話す。
こうした体験が、資源循環や持続可能なライフスタイルを自分ごととして捉えるきっかけになっているのである。





