最新記事
SDGs

サステナブルな未来へ 「チェンジ・ナウ」が示した環境テクノロジーの現在地

2025年5月13日(火)19時00分
岩澤里美(スイス在住ジャーナリスト)

■「インパクトあるAI+テクノロジー」部門 地球問題解決につながる生物模倣のデータベース

審査員を前にスピーチするアステリア社のスタッフ

ピッチセッションの会場で審査員を前にスピーチするアステリア社のスタッフ  Photo ©@HERMESBRASSEUR

自然界のしくみを模倣してデザインや技術開発に活かす「バイオミミクリー(生物模倣)」は、さまざまな分野で取り入れられている。エアコンの室外機に鳥の翼の要素を応用して省エネ化する、マグロの皮膚をヒントに低摩擦の船底塗料を開発して燃料消費量やCO2排出量を抑えるといった例からわかるように、バイオミミクリーは気候変動の具体的な対策になり得る。

アステリア社(フランス)は、そうした環境イノベーションを増やすため、AIによって作成した生物学的戦略データベース(50万件の手法)を提供する。データベースは生物学の知識を専門家以外の人でも理解できるようにわかりやすく解説し、問題分析から新しい技術の設計までの道筋を示してくれる。1月にリリースしたベータ版で、ロレアルやルノーなどがプロジェクトを進めているという。

■「インクルージョン」部門 女性用の移動式簡易トイレ

ラピー社の展示ブース

ラピー社の展示ブースでは実物が披露された Photo ©Laure Dns

ラピー社(デンマーク)は、屋外イベント向けに、女性の排尿に特化した移動式のトイレ(ポリエチレン製。リサイクル可能)を開発した。男性用の排尿専用トイレはあるのに女性用はないというジェンダー不平等を解決する。

ラピー社の女性用移動式トイレ1台3人分で出入り口は3つ。上から見ると三つ葉のクローバーのようで3つの筒がくっついている形状だ。上部は開放してあり、トイレ内での犯罪が防げる。水を使わず、使ったトイレットペーパーは備え付けの袋に入れる。底は1,100リットル(3,500人分の尿の量)のタンクになっている。個室型トイレのように長い列に並ばずに済み、素早く用を足せると好評だ。

ラピーは業者にトイレを販売し、業者がレンタルする。導入する国は増え、昨年はパリ五輪を含めて350のイベントに設置された。同社の昨年の収益は前年の2倍の35万ユーロ(約5,600万円)に達した。

行動している人たちのエネルギー

気候変動や社会格差など、世界が直面する課題に対して悲観的になりがちな昨今だが、「チェンジ・ナウ」が示したのは希望の光だ。ここに集まった数々の新しいプロジェクトを見て、「今変えていこう!今変わろう!」と行動している人たちに出会えば元気をもらえるはずだ。環境問題に立ち向かう世界的な連帯の輪は、確実に広がりを見せている。これからのチェンジ・ナウも楽しみだ。

岩澤里美[執筆者]
岩澤里美
スイス在住ジャーナリスト。上智大学で修士号取得(教育学)後、教育・心理系雑誌の編集に携わる。イギリスの大学院博士課程留学を経て2001年よりチューリヒ(ドイツ語圏)へ。共同通信の通信員として従事したのち、フリーランスで執筆を開始。スイスを中心にヨーロッパ各地での取材も続けている。欧米企業の脱炭素の取り組みについては、専門誌『環境ビジネス』『オルタナ(サステナビリティとSDGsがテーマのビジネス情報誌)』、環境事業を支援する『サーキュラーエコノミードット東京』のサイトにも寄稿。www.satomi-iwasawa.com

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

英住宅ローン承認件数、1月は2年ぶり低水準 予想外

ビジネス

英製造業PMI、2月改定値は51.7 4カ月連続5

ビジネス

仏製造業PMI、2月改定値は50.1へ上方修正

ビジネス

スイス中銀が異例の口先介入、中東情勢受けたフラン高
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本人が知らない AI金融の最前線
特集:日本人が知らない AI金融の最前線
2026年3月 3日号(2/25発売)

フィンテックの進化と普及で、金融はもっと高速に、もっとカジュアルに

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    BTS復活...でも、韓国エンタメが「苦境」に陥っている
  • 2
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからくりとリスク
  • 3
    「毎日が人生最後の日」だと思って酒を飲む...84歳医師が語る心優先の健康法
  • 4
    ドバイの空港・ホテルに被害 イランが湾岸諸国に報…
  • 5
    「若い連中は私を知らない」...大ヒット映画音楽の作…
  • 6
    「本当にテイラー?」「メイクの力が大きい...」テイ…
  • 7
    「高市大勝」に中国人が見せた意外な反応
  • 8
    【銘柄】「三菱重工業」の株価上昇はどこまで続く...…
  • 9
    【銘柄】「ファナック」は新時代の主役か...フィジカ…
  • 10
    米・イスラエルの「イラン攻撃」受け、航空各社が中…
  • 1
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医師がすすめる意外な健康習慣
  • 2
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからくりとリスク
  • 3
    村瀬心椛は「トップでなければおかしい」...スノボの謎判定に「怒りの鉄拳」、木俣椋真の1980には「ぼやき」も
  • 4
    BTS復活...でも、韓国エンタメが「苦境」に陥っている
  • 5
    中国、4隻目の空母は原子力艦か──世界3番目の原子力…
  • 6
    少女買春に加え、国家機密の横流しまで...アンドルー…
  • 7
    米国の中国依存が低下、台湾からの輸入が上回る
  • 8
    中国で今まで発見されたことがないような恐竜の化石…
  • 9
    「若い連中は私を知らない」...大ヒット映画音楽の作…
  • 10
    住宅の4~5割が空き家になる地域も......今後30年で…
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 3
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 4
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 5
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 6
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 7
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 8
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 9
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 10
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中