最新記事
SDGs

サステナブルな未来へ 「チェンジ・ナウ」が示した環境テクノロジーの現在地

2025年5月13日(火)19時00分
岩澤里美(スイス在住ジャーナリスト)

また、ハリウッド女優のナタリー・ポートマンや、2024年のパリ五輪ボクシング金メダリストのエイマヌン・ハリフ選手(アルジェリア)も出席し、会を盛り上げた。

ポートマンは9歳の時からヴィーガンで物を修理して使うなど、サステナブルライフを実践し、環境保護活動を続けていることが知られている。閉会式の檀上では女性を支援する活動、また動物保護と人権問題との関連について熱く語り、映画界に関しては「自然は征服されるべきものではなく、私たちも自然の一部であり、共存していくべきものだということを教えてくれる映画やアートが増えたら素晴らしいと思います」と語っていた。

投資家たちが高評価した企業4選

Coups de Coeur」を受賞した12社

「Coups de Coeur」を受賞した12社 Photo ©www.sebastiendelarque.com


サミットでは、審査員たちを前に各企業が3分間で事業説明をする時間が与えられる「ピッチ」セッションも開かれた。審査員は環境事業アドバイザーやイノベーションセンター職員、基金事業者や政府関係者、パートナーのメディアなどで、質疑応答の時間もあった。

2日間にわたり、12分野別のピッチに参加したのは800プロジェクトの応募の中から選ばれた150社だった。各ピッチで審査員は「社会にポジティブな影響を与える注目株だ」と思った企業に投票する。こうして専門家たちから好評を得た12社が、最終的に「クードクール(Coups de Coeur、ひと目惚れという意味)」として選出された。以下、そのうちの4社を紹介しよう。

■「海洋と水」部門 空気から飲料水を作る技術

受賞の盾を手にするソーラック社のスタッフ

受賞の盾を手にするソーラック社のスタッフ Photo ©www.sebastiendelarque.com

ソーラック社(オランダ)は、太陽熱をエネルギー源として、空気から飲料水を作る技術を開発した。フルスケールの装置では、1日あたり5,000リットルの水を製造できる。気候に関わらず世界中どこにでも設置でき、幅広い用途に適している。

まずは干ばつが深刻化しているブラジル北東部で、飲料水の安定供給を目指して実証実験を進めている。同地では、飲料水は1年中トラックで長距離輸送されており、高コストや大量のCO2排出も問題だ。この装置の導入によりそれらの課題も解消できる。このシステムがブラジルで軌道に乗れば、南アメリカの他の地域で展開する予定だ。

■「サーキュラー・エコノミー」部門 溶かした汚染物質を建材に

ヘリオサンド社のラフィック・ケファッシェCEO(左)

左端はヘリオサンド社のラフィック・ケファッシェCEO Photo ©Stephanie Lequeurre

フランスでは全廃棄物の37%、1億トン以上がリサイクル不可能で、その多くは建設業界から出るロックウールなどの断熱材だという。同国のヘリオサンド社は、それらの断熱材を太陽エネルギーで溶かして新しい建材を作る事業を進めている。

同社が開発した巨大な太陽熱集熱器は最高4,000℃に達し、エネルギーの80%が熱に変換される(目下、プロトタイプの改良中)。この高温により、毒性の強い汚染物質を含むあらゆる廃棄物が中和されるとのこと。溶かした廃棄物で、たとえばエコなセメント(溶解物80%+セメント20%)を作ることができる。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

中国万科の債券価格が下落、1年間の償還猶予要請報道

ビジネス

午前の日経平均は反発、大幅安の反動 ハイテク株の一

ワールド

イタリア製造業PMI、11月は節目の50超え 2年

ワールド

原油先物続伸、米・ベネズエラ緊張など地政学リスクで
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「世界一幸せな国」フィンランドの今...ノキアの携帯終了、戦争で観光業打撃、福祉費用が削減へ
  • 2
    【クイズ】1位は北海道で圧倒的...日本で2番目に「カニの漁獲量」が多い県は?
  • 3
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果のある「食べ物」はどれ?
  • 4
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 5
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 6
    中国の「かんしゃく外交」に日本は屈するな──冷静に…
  • 7
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 8
    600人超死亡、400万人超が被災...東南アジアの豪雨の…
  • 9
    メーガン妃の写真が「ダイアナ妃のコスプレ」だと批…
  • 10
    トランプ支持率がさらに低迷、保守地盤でも民主党が…
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 3
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 4
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体…
  • 5
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 6
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 7
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 8
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 9
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 10
    子どもより高齢者を優遇する政府...世代間格差は5倍…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中