サステナブルな未来へ 「チェンジ・ナウ」が示した環境テクノロジーの現在地
また、ハリウッド女優のナタリー・ポートマンや、2024年のパリ五輪ボクシング金メダリストのエイマヌン・ハリフ選手(アルジェリア)も出席し、会を盛り上げた。
ポートマンは9歳の時からヴィーガンで物を修理して使うなど、サステナブルライフを実践し、環境保護活動を続けていることが知られている。閉会式の檀上では女性を支援する活動、また動物保護と人権問題との関連について熱く語り、映画界に関しては「自然は征服されるべきものではなく、私たちも自然の一部であり、共存していくべきものだということを教えてくれる映画やアートが増えたら素晴らしいと思います」と語っていた。
投資家たちが高評価した企業4選
サミットでは、審査員たちを前に各企業が3分間で事業説明をする時間が与えられる「ピッチ」セッションも開かれた。審査員は環境事業アドバイザーやイノベーションセンター職員、基金事業者や政府関係者、パートナーのメディアなどで、質疑応答の時間もあった。
2日間にわたり、12分野別のピッチに参加したのは800プロジェクトの応募の中から選ばれた150社だった。各ピッチで審査員は「社会にポジティブな影響を与える注目株だ」と思った企業に投票する。こうして専門家たちから好評を得た12社が、最終的に「クードクール(Coups de Coeur、ひと目惚れという意味)」として選出された。以下、そのうちの4社を紹介しよう。
■「海洋と水」部門 空気から飲料水を作る技術
ソーラック社(オランダ)は、太陽熱をエネルギー源として、空気から飲料水を作る技術を開発した。フルスケールの装置では、1日あたり5,000リットルの水を製造できる。気候に関わらず世界中どこにでも設置でき、幅広い用途に適している。
まずは干ばつが深刻化しているブラジル北東部で、飲料水の安定供給を目指して実証実験を進めている。同地では、飲料水は1年中トラックで長距離輸送されており、高コストや大量のCO2排出も問題だ。この装置の導入によりそれらの課題も解消できる。このシステムがブラジルで軌道に乗れば、南アメリカの他の地域で展開する予定だ。
■「サーキュラー・エコノミー」部門 溶かした汚染物質を建材に
フランスでは全廃棄物の37%、1億トン以上がリサイクル不可能で、その多くは建設業界から出るロックウールなどの断熱材だという。同国のヘリオサンド社は、それらの断熱材を太陽エネルギーで溶かして新しい建材を作る事業を進めている。
同社が開発した巨大な太陽熱集熱器は最高4,000℃に達し、エネルギーの80%が熱に変換される(目下、プロトタイプの改良中)。この高温により、毒性の強い汚染物質を含むあらゆる廃棄物が中和されるとのこと。溶かした廃棄物で、たとえばエコなセメント(溶解物80%+セメント20%)を作ることができる。