最新記事
環境

大量の子ガメが車に轢かれ、人間も不眠症や鬱病に...知られざる「光害(ひかりがい)」の影響とは?

To Fix Light Pollution

2024年12月19日(木)14時02分
岩井光子(ライター)

newsweekjp20241219035516-bc3b394765346a9f00c083218d32ed0c98c32258.jpg

色温度と光の拡散を抑えた街灯の設置作業 COURTESY OF KOZUSHIMA TOURISM ASSOCIATION

人間だけでなく、海のプランクトンから昆虫、動植物、農作物に至るまで生態系にも幅広い影響が指摘されている。

特に深刻な被害が報告されているのがウミガメと渡り鳥だ。砂浜で孵化したウミガメは光を感じる方向に動いて海にたどり着く本能があるが、光の強い人工灯があると方向を見失い、大量の子ガメが車にひかれる悲劇が各地で起きている。


星の光を頼りに移動する渡り鳥も、高層ビルの明かりに惑わされて延々と周囲を飛び続ける。アメリカでは、窓に衝突して絶命する渡り鳥が年間10億羽を超える。

白光LEDのデメリット

こうした現状を打開しようと、東京都の離島である神津島村は2020年、美しい星空を守る光害防止条例を施行し、都では初めて「星空保護区」の認定を受けた。

神津島の星空


島は美しい天の川を鑑賞できる場所として人気が高まり、神津島観光協会は島民向けの星空ガイド養成にも力を入れる。鑑賞会は島の新しい観光資源として好調だ。

星空保護区を認定するのは、1988年に天文学者や環境学者らが設立した米アリゾナ州に拠点を置くNPO「ダークスカイ・インターナショナル(DarkSky International)」。光害対策にいち早く取り組んできた団体で、24カ国に80以上の支部があり、日本支部は越智が代表を務める。

団体によるダークスカイ運動は「責任ある屋外照明の推進」を掲げる。認定基準にも、屋外照明の上空への光漏れが「ほぼ0%」であることや、照明の色温度が「3000K(ケルビン)以下」といった厳しい条件が示されている。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米国株式市場・序盤=ナスダック・S&P、取引時間中

ビジネス

米CPI、9月前月比+0.3%・前年比+3.0% 

ビジネス

中国人民銀、成長支援へ金融政策を調整 通貨の安定維

ビジネス

スイス中銀、リオ・ティント株売却 資源採取産業から
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
2025年10月28日号(10/21発売)

高齢者医療専門家の和田秀樹医師が説く――脳の健康を保ち、認知症を予防する日々の行動と心がけ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    超大物俳優、地下鉄移動も「完璧な溶け込み具合」...装いの「ある点」めぐってネット騒然
  • 2
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 3
    「ママ、ママ...」泣き叫ぶ子供たち、ウクライナの幼稚園をロシアが攻撃 「惨劇の様子」を捉えた映像が話題に
  • 4
    ハーバードで白熱する楽天の社内公用語英語化をめぐ…
  • 5
    【2025年最新版】世界航空戦力TOP3...アメリカ・ロシ…
  • 6
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 7
    「宇宙人の乗り物」が太陽系内に...? Xデーは10月2…
  • 8
    国立大卒業生の外資への就職、その背景にある日本の…
  • 9
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した…
  • 10
    為替は先が読みにくい?「ドル以外」に目を向けると…
  • 1
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 2
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号返上を表明」も消えない生々しすぎる「罪状」
  • 3
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 4
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 5
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 6
    超大物俳優、地下鉄移動も「完璧な溶け込み具合」...…
  • 7
    【2025年最新版】世界航空戦力TOP3...アメリカ・ロシ…
  • 8
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 9
    本当は「不健康な朝食」だった...専門家が警告する「…
  • 10
    ハーバードで白熱する楽天の社内公用語英語化をめぐ…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 3
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 4
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 5
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 6
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 7
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 8
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中