最新記事
SDGsアワード

名古屋のものづくりの現場から生まれた、唯一無二のアップサイクル品

2024年4月17日(水)18時05分
森田優介(ニューズウィーク日本版デジタル編集長)
工場 金型

金型のパーツの山(左写真)から、クリエイティブディレクター/アートディレクターの久保雅由氏(右写真の真ん中)らが特製トロフィーの「素材」を選んだ。このさびだらけの鉄の塊から…… Courtesy of Kondo Print

<ニューズウィーク日本版「SDGsアワード」で受賞者に贈呈したトロフィーは、もとはオフィス用家具メーカーに眠っていた金型のパーツだった>

JR名古屋駅から2キロメートルも離れていない名古屋中心部に、約4000坪の工場を構えるアルプススチール株式会社。1938年創業で、社員数は160人以上。高い技術力と一貫生産体制を強みに、ロッカーなどのオフィス用家具を製造するメーカーだ。

同社の代表取締役社長、長谷川茂さんの元に1月、同じ名古屋にある株式会社近藤印刷の代表取締役社長、近藤起久子さんから1本の電話が入った。「廃材を使ったトロフィーを作りたい」そんな相談だった。

話を聞いた長谷川さんの脳裏には、工場の一角に保管してある、不要になった金型を解体したパーツの山が浮かんだという。再び使うあてのないものがほとんどだが、売っても大した金額にならず、かといって大切な金型を廃棄するのも忍びない。

「昔から、なんでもかんでも取っておく会社なんです」と、長谷川さんは言う。

そんな名古屋のものづくりの現場から、ニューズウィーク日本版「SDGsアワード2023」の特製トロフィーは生まれた。

3月15日に開催した「SDGsアワード2023」授賞式。編集部は外部審査員である慶應義塾大学大学院の蟹江憲史教授と共に、パートナー企業63社のSDGs(持続可能な開発目標)の取り組みの中から、「環境部門」「社会部門」「経済部門」「脱炭素部門」「地域課題部門」の5部門賞と、その中から最優秀賞を選び、授賞式で発表した。

(※SDGsアワードの詳細はこちら「私たちがSDGsプロジェクトを始めた理由」──アワード授賞式レポート

各受賞者に贈呈した特製トロフィーは、本来であれば捨てられるはずだったものに新たな価値を与えて再生する、いわゆるアップサイクル品だ。SDGsの12番目の目標「つくる責任、使う責任」の精神を、トロフィーに込めることを意図した。

(※2023年度SDGsアワードの受賞企業の取り組みはこちら発表!「ニューズウィーク日本版SDGsアワード 2023」受賞企業

編集部の依頼に応え、この特製トロフィーを作ってくれたのが、パートナー企業でもある近藤印刷、クリエイティブディレクター/アートディレクターの久保雅由さん、そしてアルプススチールである。

特製トロフィーはどのようにして生まれたのか。4月上旬、お世話になった3者に話を聞いた。

私たち編集部はまず、「SDGsの趣旨に合うようなトロフィーを作りたい」と、近藤印刷の近藤さんに相談した。

同社は脱プラスチックの潮流の中、強みだったフィルム印刷から「エシカル印刷」へと軸足を移し、環境に配慮した素材を用いたグッズの制作や、地域の循環経済のエコシステム構築を目指した事業に取り組んでいる(関連記事:「エシカル印刷」へ 近藤印刷が切り拓く地域共創×循環経済の道)。

「(ニューズウィーク日本版から)話を聞いて、絶対にかっこいいものを作りたいと思った。でも、自分たちだけでは難しいかもしれないから、久保さんにデザインを頼もうと考えました」と、近藤さんは振り返る。社内にもデザイナーはいるが、近藤印刷は案件によって、外部のデザイナーと協業もする。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米政府閉鎖で低所得者向け光熱費支援に支障、各州に資

ビジネス

米メタ、来年の設備投資拡大を予想 積極的なAI投資

ビジネス

ムーディーズ、ニデックをBaa1に格下げ 引き続き

ビジネス

マイクロソフト7─9月売上高、クラウド好調で予想超
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 3
    コレがなければ「進次郎が首相」?...高市早苗を総理に押し上げた「2つの要因」、流れを変えたカーク「参政党演説」
  • 4
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 5
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 6
    【クイズ】開館が近づく「大エジプト博物館」...総工…
  • 7
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 8
    リチウムイオンバッテリー火災で国家クラウドが炎上─…
  • 9
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 10
    【クイズ】12名が死亡...世界で「最も死者数が多い」…
  • 1
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 3
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した国は?
  • 4
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 5
    超大物俳優、地下鉄移動も「完璧な溶け込み具合」...…
  • 6
    熊本、東京、千葉...で相次ぐ懸念 「土地の買収=水…
  • 7
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 8
    庭掃除の直後の「信じられない光景」に、家主は大シ…
  • 9
    シンガポール、南シナ海の防衛強化へ自国建造の多任…
  • 10
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 1
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ…
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 8
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 9
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 10
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中