最新記事

市販の鎮痛剤が薬剤耐性を後押し?――抗生物質との飲み合わせに潜むリスク

Painkillers Are a Headache

2025年9月17日(水)15時14分
ハンナ・ミリントン
市販の鎮痛剤が薬剤耐性を後押し?――抗生物質との飲み合わせに潜むリスク

鎮痛剤と抗生物質を併用すると、感染症が治らなくなり死に至る危険も FIZKES/SHUTTERSTOCK

<薬局で手軽に買えるアセトアミノフェンやイブプロフェンといった鎮痛剤が、知らないうちに細菌の薬剤耐性(AMR)を強めているかもしれない>

薬局で普通に買える鎮痛剤が、知らないうちに「薬剤耐性(AMR)」の一因になっているかもしれない。

細菌などの微生物が引き起こす感染症を、私たちは薬で治療する。AMRとは微生物が薬に対して抵抗力を獲得する現象を指し、これがいま世界的に大問題となっている。


南オーストラリア大学の研究チームが発表した論文によれば、市販の鎮痛剤には細菌のAMRを促進する作用があり、複数の鎮痛剤を併用した場合は作用が増幅するという。

研究チームは尿路感染などの治療に使われる抗生物質シプロフロキサシンと抗生物質ではない薬、そして大腸菌の関係を調査。鎮痛剤のアセトアミノフェンとイブプロフェンが細菌の変異を促し、大腸菌がシプロフロキサシンに対して強い耐性を獲得することを突き止めた。

複数の薬を常用する高齢者、特に施設で共同生活を送る高齢者には深刻なリスクになり得ると研究者は注意を促す。

WHO(世界保健機関)はAMRを「世界の公衆衛生と開発に対する最大級の脅威」と位置付ける。2019年には細菌性AMRが世界で495万人の死に関与し、うち127万人については直接の死因になったと推計される。

論文の著者で微生物学者のリーティー・ベンターは「AMRを獲得した微生物には抗生物質などの薬が効かなくなる」と、本誌に語った。「そのため感染症の治療が困難になり、感染拡大や患者の重症化、死亡が著しく増える」

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ウクライナ和平協議2日目が終了、「困難な交渉」 継

ビジネス

グレンコア、25年は3年連続減益 株主に20億ドル

ワールド

中国もロシアも秘密裏に核実験実施せず=クレムリン

ワールド

訂正-ペルー議会、また大統領罷免 就任4カ月
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ウクライナ戦争4年 苦境のロシア
特集:ウクライナ戦争4年 苦境のロシア
2026年2月24日号(2/17発売)

帰還兵の暴力、ドローンの攻撃、止まらないインフレ。国民は疲弊しプーチンの足元も揺らぐ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    オートミール中心の食事がメタボ解消の特効薬に
  • 2
    ポーランドが「核武装」に意欲、NATO諸国も米国の核の傘を信用できず
  • 3
    【銘柄】マイクロソフトの株価が暴落...「AI懸念」でソフトウェア株総崩れの中、投資マネーの新潮流は?
  • 4
    完全に「ホクロ」かと...医師も見逃した「皮膚がん」…
  • 5
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 6
    「ヒンメルならそうした」...コスプレイヤーが消火活…
  • 7
    川崎が「次世代都市モデルの世界的ベンチマーク」に─…
  • 8
    なぜ「あと1レップ」が筋肉を壊すのか...「高速パワ…
  • 9
    極超音速ミサイルが通常戦力化する世界では、グリー…
  • 10
    生き返ったワグネルの「影」、NATO内部に浸透か
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 3
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発される中国のスパイ、今度はギリシャで御用
  • 4
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 5
    【銘柄】マイクロソフトの株価が暴落...「AI懸念」で…
  • 6
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 7
    「ヒンメルならそうした」...コスプレイヤーが消火活…
  • 8
    なぜ「あと1レップ」が筋肉を壊すのか...「高速パワ…
  • 9
    がんは何を食べて生き延びるのか?...「ブドウ糖」の…
  • 10
    「目のやり場に困る...」アカデミー会場を席巻したス…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 6
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 7
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 8
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中