「太ってもいい」は嘘だった?...「ボディ・ポジティブ」の旗手たちも糖尿病薬で「お手軽ダイエット」の功罪

The Beautiful And The Damned

2025年6月5日(木)16時35分
ヘスス・メサ(本誌英語版エディター)

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ケネディ保健福祉長官はGLP-1薬を批判し、公的保険でカバーできないようにした ANDREW HARNIK/GETTY IMAGES

医療財政が破綻しかねない

コロンビア大学のクリッツマンは、この種の薬の使用がさらに拡大すれば、医療財政が揺らぎかねないと警鐘を鳴らす。「年間1万2000ドルほどの費用がかかる。アメリカ人の3分の2が用いるようになれば、医療財政は破綻する」

ロバート・ケネディJr.保健福祉長官も、GLP-1薬に極めて否定的だ。「(製薬会社は)アメリカ人に売ることを当て込んでいる。アメリカ人が愚かで、安易に薬を使用しているからだ」と、就任前の昨年10月にFOXニュースで語っていた。

バイデン前政権は、メディケア(高齢者医療保険制度)で減量薬としてGLP-1薬を用いることを認める案(予算規模は350億ドル)を示していたが、トランプ政権はこの計画を棚上げした。


医療経済学者たちも、長期間にわたって使用する際の経済的負担の重さに懸念を示している。KFF(旧カイザー家族財団)の調査によれば、アメリカでのオゼンピックの価格は1カ月当たり936ドル。これは、調査対象国でアメリカに次いで2番目に高い日本と比べても5倍以上だ。

しかも、減量薬の高額な費用を負担できたとしても、いまアメリカの社会でダイエットを取り巻く板挟みの状況から逃れられる人はほとんどいない。もっと痩せなくてはならないという重圧を感じている一方で、実際に減量に成功すれば、厳しい詮索の視線にさらされるのだ。

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