「太ってもいい」は嘘だった?...「ボディ・ポジティブ」の旗手たちも糖尿病薬で「お手軽ダイエット」の功罪
The Beautiful And The Damned
「GLP-1薬に関して指摘されている倫理上の懸念は主として、費用とアクセスの問題だ」と、コロンビア大学のロバート・クリッツマン教授(精神医学・生命倫理)は言う。費用が月額で1000~1400ドルにも上るのだ。
減量薬としての使用は現段階で適用外であるにもかかわらず、この種の薬へのメディケイド(低所得者医療保険制度)の支出は急激に増加している。総支出額は19年の5億7730万ドルから23年には39億ドルに跳ね上がった。
しかも、増加ペースが頭打ちになる気配はない。それを受けて、メディケイドでのGLP-1薬の使用を制限することを検討し始めた州もある。
しかし、肥満が無視できない問題であることも事実だ。現在、アメリカの成人の42%が肥満の状態にある。この割合は、1980年代に比べて2倍近い。肥満を解消するのは容易でなく、しかもほかのさまざまな慢性疾患の原因になる。そうした認識の下、米国医師会は2013年、肥満を一つの病気と位置付けた。
こうした事情に照らすとGLP-1薬は長く待望されていた薬といえるだろう。臨床試験によると、この種の薬を用いた人は体重が15~25%減るだけでなく、血糖値、血圧、循環器系の健康状態も改善するという。
米政治の上層レベルも関心を示している。トランプ政権の中枢にいた起業家のイーロン・マスクは、GLP-1薬をもっと利用しやすくするべきだと主張していた。
Nothing would do more to improve the health, lifespan and quality of life for Americans than making GLP inhibitors super low cost to the public.
— Elon Musk (@elonmusk) December 11, 2024
Nothing else is even close. https://t.co/SNGcxzkcqE
「アメリカ人の健康と寿命と生活の質を改善するためには、(GLP-1薬を)極めて安価で提供する以上に有効な方法はないだろう」と、昨年12月に「X(旧ツイッター)」に投稿した(マスクは自身もウゴービを用いていると認めている)。