がん患者の就労問題を問う。仕事を生きがいや生活の質向上につなげるには

主治医との信頼関係が最も重要(画像はイメージです)shutterstock/Imtiaz_h
<日本では、今や「2人に1人ががんになる時代」と言われており年間100万人以上が新たにがんと診断されている。がんと診断された本人、あるいはがん患者の家族が治療やその後の生活において取り入れたいセルフケアが注目されている>
本記事では、がんサバイバーが自分らしく生きていくかためのセルフケアについて考えたい。『がん専門医が伝えたい がん患者が自分らしく生きるためのセルフケア大全』(CEメディアハウス)を参考に見ていこう。2回目の本記事ではがんサバイバーの就労問題について考えてみたい。
がんサバイバーの就労問題
がんは、高齢者に多いことは事実だ。しかし、実際はがん患者のおよそ3割は就労世代と呼ばれる年齢層(15~65歳)だ。
さらに、少子高齢化や人手不足を背景に、定年延長や高齢者の再雇用を推進する傾向があり、将来的には今以上に働く世代のがん患者さんが増えることが予想される。今や「がんと仕事」は切り離せないものであり、避けては通れない問題になっている。
がんを克服するためには、仕事とどのように付き合っていけば良いのだろうか? 実際には、がんになったら仕事をやめてしまう人が多い。
がんになったら仕事はやめるべき?
「厚生労働省の研究グループ」(「がんの社会学」に関する合同研究班)が実施した調査(2013年)によると、会社などに勤務している140人のうち約35%はがんと診断された後に退職している。患者さんの社会的背景やがんの進行度・治療状況などは人それぞれ違うため、一概には言えないが可能な限り仕事は続けたほうが良い。
なかには「がんの治療に専念したいから」という理由で仕事をやめる人もいるがあまり賛成できない。これにはいろいろな理由がある。
1.仕事で体を動かす
まず、仕事を続けることは身体活動量を増やすことにつながる。つまり通勤も含めて仕事によって、意識しなくても体を動かすことになる。デスクワークであっても一歩も歩かないという人はいないだろう。
ある研究によると、がん患者やがんサバイバーで体をよく動かす人は、再発率が減り生存期間が長くなるという結果が報告されている。
2.収入源としての仕事
仕事を続けることは収入源としても重要である。がん治療にはお金がかかる。治療や生活に必要なお金を稼ぐという意味でも仕事はやめるべきではない。
もちろん、高額になった医療費が家計を圧迫する場合、高額療養費制度、傷病手当金や障害年金などの支援制度が利用できることもあるが、仕事による定期的な収入にまさるものはない。