がん患者の就労問題を問う。仕事を生きがいや生活の質向上につなげるには
3.仕事が生きがいになる
大げさかもしれないが、仕事は生きがいにもなる。仕事を通じて社会に貢献していると感じる人もいるし、職場の仲間といるのが楽しいと感じる人もいるはずだ。
また、自分が必要とされていると感じることで、自分の存在意義を見いだしている人もいる。東京都福祉保健局「がん患者の就労等に関する実態調査」(2014年)によると、仕事を続けたい理由のうち、「働くことが自身の生きがいであるため」と答えた人が57%もいた。がんを克服するためには生きがいが必要なのだ。
私の担当した患者さんのなかに、胆管がんの50代の男性患者さんがいた。手術後に教師の仕事に復帰し、バリバリ働いていた数年間は再発なく過ごしていた。
ところが、定年退職した途端、がんが再発し間もなく亡くなってしまった。偶然かもしれないが、仕事が生きがいになってがんの再発を抑えていた可能性があるのではないか。このような理由から、がん患者にはできるだけ仕事を続けて欲しい。
もちろん、がんの進行具合や治療の関係で、仕事や普段の生活ができない場合もある。ただ、あきらめずに「仕事も含めてこれまでの生活を続ける」、あるいは「徐々に元の生活に戻していく」という気持ちが大切だ。
佐藤典宏(さとう・のりひろ)
帝京大学福岡医療技術学部教授。福岡県生まれ。九州大学医学部卒。2001年から米国ジョンズ・ホプキンズ大学医学部に留学し多くの研究論文を発表。1000例以上の外科手術を経験し、日本外科学会専門医・指導医、がん治療認定医の資格を取得。多くの人にがんに関する情報を提供するため、公式YouTube「がん情報チャンネル・外科医 佐藤のりひろ」を開設。チャンネル登録者数は20万人を超える(2025年4月現在)。『専門医が教える最強のがん克服大全』(KADOKAWA)、『がんにも勝てる長生き常備菜』(主婦と生活社)など著書多数。
がん情報チャンネル:https://ganninfo.jp
がん相談サロン:https://yoor.jp/door/norihirosato
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