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なぜ大衆はナチスに傾倒してしまったのか? 『全体主義の起源』と倫理思想【3分だけ哲学】

2025年5月13日(火)16時30分
富増章成

国民国家とは、文化を共有している人々の集合体・国民と国家の統一を目指す国家です。ところが、当時の国民は富裕層と貧困層に分かれていましたので、「文化的に1つだ」と主張しても理想通りにはなりません。

危機下ではいじめが起きる:仮想敵のでっち上げ

また、ユダヤ人はユダヤ教で結びついています。これは、階級社会から別のグループとして離れているという側面がありました。国家の中で不満が起こると、人々はユダヤ人に八つ当たりするようになったのです。

この典型例がドレフュス事件でした。フランス軍の参謀本部に勤めるユダヤ系将校のアルフレッド・ドレフュスは、スパイ容疑で逮捕され、ユダヤ人であるがゆえに、強い嫌疑をかけられ終身流刑に処せられました。

資本主義が帝国主義に移行することは、資本の輸出を進める政府が他国支配を強めることを意味します。国民国家は領土、人民、国家を歴史的に共有するはずですが、帝国主義の段階では異質な住民を同化し、「同意」を強制するしかありません。

孤立感が深まるとフィクションに騙される:陰謀論

危機感が高まると、個人は帰属意識を失って流されやすい大衆の1人となります。すると、人は孤立して無力感にとらわれ、所属感を与えてくれる空想的なフィクションに惹かれてしまいます。

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