最新記事
健康

「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だった...スーパーエイジャーに学ぶ「長寿体質」

2025年2月11日(火)08時50分
ニール・バルジライ (アルバート・アインシュタイン医科大学教授)
サラダ

joannawielgosz-pixabay

<重要なのは「寿命」ではなく、「健康寿命」...。長寿遺伝子発見者による、アンチエイジングの最前線から>

長寿遺伝子発見者による、最新研究と衝撃の提言書SuperAgers スーパーエイジャー 老化は治療できる(CCCメディアハウス)の第2章「なぜ老いるのか」より一部編集・抜粋。

重要なのは寿命(ライフスパン)ではなく、健康寿命(ヘルススパン)...。


 
◇ ◇ ◇

わたしが老化科学の研究を始めたころ、摂取カロリーを減らすと寿命が延びるという説が世界中の研究室で検証されていた。ふだん食べている量を減らすことを「カロリー制限」という。

動物実験では、老化を遅くし、平均寿命や最高寿命、そして健康寿命を延ばすのに再現可能な効果がもっともあることがわかった。何年ものあいだカロリー制限が遺伝科学の中心となってきたのは、それまで発見されたなかで、大幅に寿命を延ばし、加齢性疾患の発症を遅らせると信頼できる唯一の方法だったからだ。

わたしたちは、さまざまなげっ歯類で容易に再現できる実験で、ラットの摂取カロリーを40%制限してみた。すると、カロリー制限されたラットは、自由裁量で好きなだけ餌を食べたラットよりも約40%長生きした。この結果に世界中の研究室が色めきたち、カロリー制限で最高寿命が延びる理由を探りはじめた。

わたしたちの発見をまとめると、カロリー制限は、げっ歯類の加齢性病変、がん、その他の加齢性疾患を減らし、ほとんどの生理的機能の速度を落とすことがわかった。つまり寿命だけでなく、健康寿命も延びるのである。さらにうれしいのは、人間にも同じような効果がたしかにあると考えられることだった。

ただ、わたしは2型糖尿病の専門医なので、人々にとってカロリー制限がどんなに難しいかよく知っている。どの患者にも体重を減らすようにと指示するのだが、それができる人は3%以下だ。

もしカロリー制限が人間にもラットと同じぐらい効くのなら、制限が効くメカニズムを特定し、それほどカロリーを減らさなくてもよい薬や治療法を開発する必要があるだろう。いわば疑似カロリー制限だ。

大半の人はどんなにがんばっても、ふだんの食事量から毎食40%のカロリーを減らしつづけることはできないだろう。なんとかやっている人については、わたしはいつもこう言っている。「必ずとは言えませんが、たぶん長生きできると思いますよ」

日本
【イベント】国税庁が浅草で「伝統的酒造り」ユネスコ無形文化遺産登録1周年記念イベントを開催。インバウンド客も魅了し、試飲体験も盛況!
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、シカゴ・ロス・ポートランドから州兵撤退

ビジネス

米国株式市場=続落、25年は主要3指数2桁上昇 3

ビジネス

NY外為市場=ドル上昇、年間では2017年以来の大

ワールド

ゼレンスキー氏「ぜい弱な和平合意に署名せず」、新年
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめる「腸を守る」3つの習慣とは?
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    中国軍の挑発に口を閉ざす韓国軍の危うい実態 「沈黙…
  • 5
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 6
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 7
    「すでに気に入っている」...ジョージアの大臣が来日…
  • 8
    「衣装がしょぼすぎ...」ノーラン監督・最新作の予告…
  • 9
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 10
    「サイエンス少年ではなかった」 テニス漬けの学生…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 6
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 7
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 8
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 9
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 10
    「衣装がしょぼすぎ...」ノーラン監督・最新作の予告…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中