最新記事
健康

「他人の便を患者の腸に入れると、がんが治る?」 東大名誉教授が科学的に解説する納得の健康長寿術

2024年6月24日(月)16時37分
石浦 章一(理学博士)*PRESIDENT Onlineからの転載

一般に、便というのは腸内細菌と食物繊維からできています。まず健康な人の便を取って、生理食塩水と混ぜて、ろ過するのです。そうするとろ過したフィルターの上には不溶性の食物繊維などがたまります。腸内細菌はろ紙を通って下の方に、溶液の方にいきます。

そこで、下へろ過されてきた腸内細菌を注射器でお尻から別の人の腸へ移植するのです。しかし最近では、採取した腸内細菌をカプセル化して飲むことも行われています。

このような方法で、がんまで治ったと報告されました。なぜだか分かりません。だから今のところはまだ科学的に証明されたとまではいかない段階です。

しかし、オプジーボと呼ばれるがんの治療薬で効果がなかったような患者さんに便移植をしたところ、メラノーマ(悪性黒色腫)が完治したという報告がされ、皆、驚いたのです。つまり腸内細菌はがんにも効いているのか、と。

ある報告では自閉症にも効くとか、いろんな報告が今されている状況です。うつ病にも効く、などといった報告もあります。

【腸内の善玉菌を増やそうとしてヨーグルトを食べる人の誤解】

腸内細菌というのは腸の中にいる細菌のことで、善玉菌、悪玉菌とかよく言いますね。善玉菌というのはビフィズス菌とか乳酸菌です。この2つは同じではありません。

乳酸菌は小腸にいて、ビフィズス菌は主に大腸にいます。乳酸菌は自然界に広く分布し、名前の通り乳酸を出して腸内環境を酸性に保ちます。一方、ビフィズス菌は人や動物の腸内にいて乳酸や酢酸を出し、悪玉菌を殺す働きがあります。どちらも必要なんですね。

逆に悪玉菌というのはウェルシュ菌やブドウ球菌など、臭いもの、人体に悪いものをつくるような細菌です。それ以外には大腸菌(無菌株)など、ほとんど何の役に立っているのか分からないような日和見菌というものもいます。

腸の中では日和見菌がほとんどで、本当の悪玉菌というのは10パーセントくらいです。一方、善玉菌は20パーセントくらいです。

皆さんの中には善玉菌を増やそうとしてヨーグルトを食べている人はいませんか。食べた菌はほとんど胃で分解されて、腸に届かないのです。大事なのは、腸で有用な菌を増やすことなのです。

だから本当にヨーグルトだけでいいかとか、乳酸菌を食べればいいかというと、それもちょっとまだ分からないところがあります。このようにして腸内細菌も、最近、体力維持に関わっていることが話題になっています。

【「ケイ素=シリカ」が入ったサプリメントが売れるという謎】

人間のからだを構成する元素は、酸素が63パーセント、炭素20パーセント、水素9パーセント、窒素5パーセントで、残りがカルシウム1パーセントくらいです。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米国務長官、週内にもイスラエル訪問=報道

ワールド

ウクライナ和平へ12項目提案、欧州 現戦線維持で=

ワールド

トランプ氏、中国主席との会談実現しない可能性に言及

ワールド

ロの外交への意欲後退、トマホーク供与巡る決定欠如で
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
2025年10月28日号(10/21発売)

高齢者医療専門家の和田秀樹医師が説く――脳の健康を保ち、認知症を予防する日々の行動と心がけ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 2
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 3
    TWICEがデビュー10周年 新作で再認識する揺るぎない「パイオニア精神」
  • 4
    米軍、B-1B爆撃機4機を日本に展開──中国・ロシア・北…
  • 5
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 6
    【クイズ】12名が死亡...世界で「最も死者数が多い」…
  • 7
    「認知のゆがみ」とは何なのか...あなたはどのタイプ…
  • 8
    本当は「不健康な朝食」だった...専門家が警告する「…
  • 9
    増える熟年離婚、「浮気や金銭トラブルが原因」では…
  • 10
    若者は「プーチンの死」を願う?...「白鳥よ踊れ」ロ…
  • 1
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号返上を表明」も消えない生々しすぎる「罪状」
  • 2
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 3
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ…
  • 6
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道され…
  • 7
    本当は「不健康な朝食」だった...専門家が警告する「…
  • 8
    日本で外国人から生まれた子どもが過去最多に──人口…
  • 9
    「心の知能指数(EQ)」とは何か...「EQが高い人」に…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 3
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレクトとは何か? 多い地域はどこか?
  • 4
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 5
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 6
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 7
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 8
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 9
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
  • 10
    iPhone 17は「すぐ傷つく」...世界中で相次ぐ苦情、A…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中