最新記事

ライフスタイル

「将来のために今は我慢」は間違い!? 哲学者が説く「本当に幸せな人生」のあり方とは

2022年7月11日(月)20時22分
岸見一郎(哲学者) *PRESIDENT Onlineからの転載
アリとキリギリス

jehsomwang - iStockphoto


老後のためにどう備えればいいのか。哲学者の岸見一郎さんは「老後には備えないほうがいい。未来がある保証はどこにもなく、思った通りの死に方ができるとは限らない。『終活』に勤しむよりも、今できることに専念してその喜びを享受したほうがいい」という――。

※本稿は、岸見一郎『孤独の哲学 「生きる勇気」を持つために』(中公新書ラクレ)の一部を再編集したものです。

これから先のことは誰にもわからない

「人生100年時代」といっても、長生きできるとは限りません。たしかに平均寿命は延びましたが、それは統計上の話でしかありません。今後、長生きする人が増えていくというのは一般論としては本当だとしても、他ならぬ自分が何歳まで生きることになるかは誰にもわかりません。

そんなに長生きするのかと思うとゾッとするという人もいますが、長生きしたい、したくない以前に、そもそも長生きできるという保証はどこにもないのですから、100歳を前提に人生設計をすることは、私にはあまり意味があるとは思えません。

そうであれば、直近のことであれ、(長生きをするとすればの話ですが)遠い先のことであれ、こないかもしれない未来のことを今、思い煩って恐れたり、不安になったりすることには意味がありません。『老後に備えない生き方』という題名の本を書いたことがあります。もちろん、備えておかなければならないことは多々あります。しかし、老後に備えるために「今」生きることの喜びをふいにしては意味がないと、私は書きました。

「未来に本当の人生がある」と思い込まされている

若い人であれば、今の人生をきたるべき本番の日のためのリハーサルだと考える人はいるでしょう。そのような人は、子どもの頃から、「将来成功するためには、今はしたいことがあっても我慢して勉強しなさい。今、頑張っておけば後で楽ができるから」というようなことを大人からいわれ、未来に本当の人生があると思い込まされてきたのです。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

石破首相「双方の利益になるよう最大限努力」、G7で

ワールド

米中貿易枠組み合意、軍事用レアアース問題が未解決=

ワールド

独仏英、イランに核開発巡る協議を提案 中東の緊張緩

ワールド

イスラエルとイランの応酬続く、トランプ氏「紛争終結
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 2
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 5
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 6
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 7
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 8
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 9
    4年間SNSをやめて気づいた「心を失う人」と「回復で…
  • 10
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 5
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 9
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中