最新記事

ライフスタイル

「将来のために今は我慢」は間違い!? 哲学者が説く「本当に幸せな人生」のあり方とは

2022年7月11日(月)20時22分
岸見一郎(哲学者) *PRESIDENT Onlineからの転載

自分でもそう信じて疑わず、成功者として生きられると信じて、今の喜びを犠牲にしてまで一心不乱に勉強しても、その努力が報われるとは限りません。行きたいと思っていた大学に入れなかったり、大学に入ったのにコロナ禍で講義を満足に受けられなかったりというような思いがけない出来事に遭遇し、輝かしい本番の人生などどこにもなかったと気づくことがあります。

たとえ首尾よく希望する大学に入れたとしても、受験勉強の苦労は、その後の人生で経験する苦労と比べれば、大したものではありません。

「終活」に励む人は今を生きる喜びを犠牲にしている

この先何があろうと、今が本番です。先の人生のために今を楽しまない生き方を、私は好ましいとは思いません。「終活」をする人も同様です。今楽しめるのに、最期のために今生きる喜びを犠牲にしているように私には思えるのです。

誰もが死を免れることはできませんが、いつどこでどんなふうに死ぬのかは自分で決めることはできません。家族と暮らしていても、一人で死ぬことになるかもしれませんし、看取られて死ねるとしても、死ぬのは自分であって、他の人が一緒に死んでくれるわけではありません。

未来は「未だ来ていない」というより、「ない」のです。未来があるという保証はどこにもありません。少なくとも、自分が思い描いている人生になるという保証はまったくありません。

そうであれば、徒にこれから起こることを恐れるよりも、今できることに専念する。これが「今を生きる」ということの意味です。

「未来は悪い」と考える人は今を改善する努力をしない

これから先を考えて恐れたり、不安になったりするのにはわけがあります。「孤独死するかもしれない」という恐れに囚われている人は少なくありません。家族に頼らず、死んでからの諸々のことは友人に任せようという人もいますが、煩瑣(はんさ)な手続きを引き受けてくれるような友人がいなければどうするのかという問題があります。そのようなこれから起こるであろうこと、死んでからのことを思うと不安でならない気持ちはわかります。

しかし、「不安や恐れに囚われているので、前向きに生きられない」のではありません。むしろ、「前向きに生きないために、孤独死するかもしれないというような不安に囚われている」と考えた方が、不安に囚われる真実に近づけます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米控訴裁、ポートランドへの州兵派遣認める判断 トラ

ワールド

米ロ外相が電話会談、ウクライナ戦争解決巡り協議=国

ビジネス

NY外為市場=ドル、対円で小幅高 高市政権発足へ

ビジネス

米国株式市場=大幅続伸、ダウ500ドル超値上がり 
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
2025年10月28日号(10/21発売)

高齢者医療専門家の和田秀樹医師が説く――脳の健康を保ち、認知症を予防する日々の行動と心がけ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 2
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 3
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 4
    本当は「不健康な朝食」だった...専門家が警告する「…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 7
    TWICEがデビュー10周年 新作で再認識する揺るぎない…
  • 8
    【インタビュー】参政党・神谷代表が「必ず起こる」…
  • 9
    ニッポン停滞の証か...トヨタの賭ける「未来」が関心…
  • 10
    若者は「プーチンの死」を願う?...「白鳥よ踊れ」ロ…
  • 1
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号返上を表明」も消えない生々しすぎる「罪状」
  • 2
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 3
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ海で「中国J-16」 vs 「ステルス機」
  • 4
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道され…
  • 5
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 6
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 7
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 8
    日本で外国人から生まれた子どもが過去最多に──人口…
  • 9
    本当は「不健康な朝食」だった...専門家が警告する「…
  • 10
    「心の知能指数(EQ)」とは何か...「EQが高い人」に…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 3
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に...「少々、お控えくださって?」
  • 4
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 5
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 8
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中