最新記事

0歳からの教育

子どもの事故にはパターンがある、防ぐためにできることは?

Preventing Accidents

2021年12月20日(月)10時55分
井上佳世(ライター)
赤ちゃんと段差の危険性

段差での転落、目を離した間の溺水、ボタンや電池などの誤飲など、起こりやすい事故には繰り返されてきたパターンがありデータも蓄積されている IILLUSTRATION BY SIRITAT TECHAPHALOKUL-SHUTTERSTOCK

<起こりやすい事故には発達段階に応じてパターンがあることが、研究から分かっている。真の「見守り」は目を離しても安心な環境をつくること>

1歳のわが子に水遊びをさせようと、母親は小さなたらいに水を張った。タオルを取りにその場を離れたのはほんの一瞬。だが戻ったときに目にしたのは、たらいに顔を沈めて溺死したわが子の姿だった──。

埼玉医科大学総合医療センター小児科の加部一彦によれば、そんな悲惨な事故が後を絶たないという。

子供の死因の中で常に上位にあるのが、不慮の事故だ。子供の命を奪うリスクは日常のどこにでも潜んでいるが、そのほとんどが家庭内で起こっている。

1歳以上の不慮の事故死の約半数を占めるのが溺水だ。乳幼児は溺れているときには暴れると思いがちだが、実際は「静かに溺れる」と、加部は言う。

「ビニールプールでも浴槽でも、口と鼻が塞がれるだけの水量があれば簡単に溺水してしまう」

頭が大きくバランスが悪い乳幼児は、ふとしたことで体勢を崩し、落ちたり、転んだりする。

「子供の事故死は、発達段階と密接に関係するので、月齢によって起こりやすい事故が変わることを知っておくことが大切」と、加部は強調する。

まだ自分では動けない6カ月頃までで、最も注意が必要なのは窒息だ。消費者庁のデータでは、0歳児の不慮の事故の中での窒息死の割合は約9割にも上る。布団や枕が口を塞いでしまうベッド内での事故、上の子が与えた食べ物が喉に詰まる例も多い。

6カ月以降、ハイハイするようになると、思わぬところに入り込み、手にした物を全て口に持っていくため誤嚥(ごえん)事故が急増する。

特に、日用品や家電のボタン電池は要注意だ。飲んでしまえば開腹手術は免れない。リモコンなどは、手の届かないところに置く習慣が必要だ。

1歳前後でつかまり立ちを始め、やがて歩きだすと、ベランダからの落下、交通事故、水場での溺水といった、一瞬で命を奪う事故の頻度が高まる。

0sai-mook-20211220-2.jpg

IILLUSTRATION BY SIRITAT TECHAPHALOKUL-SHUTTERSTOCK

あっという間は0.5秒

成長に伴い、子供は何にでも興味を持ち、遊び道具にしてしまう。ロールカーテンのひも、炊飯器の湯気、ウオーターサーバー。

親が四六時中、子供から目を離さずにいる努力をしなければ、家庭内の悲惨な事故を防げないのだろうか。

東京工業大学教授でNPO法人セーフキッズジャパン理事の西田佳史は、「見守ることが事故の予防になるというのは誤解で、迷信のようなもの。目を離してもよい状態にする環境づくりが、事故の予防効果を上げる」と断言する。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

トランプ氏、ノーベル賞逃し軌道修正 「もう平和だけ

ワールド

イラン、インターネット遮断解除検討か 国営TVハッ

ワールド

米の脅迫に屈さず、仏独財務相 反威圧措置も選択肢に

ワールド

高市首相23日解散表明、投開票2月8日 与党過半数
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:総力特集 ベネズエラ攻撃
特集:総力特集 ベネズエラ攻撃
2026年1月20日号(1/14発売)

深夜の精密攻撃でマドゥロ大統領拘束に成功したトランプ米大統領の本当の狙いは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中国のインフラ建設にインドが反発、ヒマラヤ奥地で国境問題が再燃
  • 2
    【銘柄】「住友金属鉱山」の株価が急上昇...銅の高騰に地政学リスク、その圧倒的な強みとは?
  • 3
    DNAが「全て」ではなかった...親の「後天的な特徴」も子に受け継がれ、体質や発症リスクに影響 群馬大グループが発表
  • 4
    AIがついに人類に「牙をむいた」...中国系組織の「サ…
  • 5
    韓国『日本人無料』の光と影 ── 日韓首脳が「未来志向…
  • 6
    シャーロット英王女、「カリスマ的な貫禄」を見せつ…
  • 7
    ピラミッドよりも昔なのに...湖底で見つかった古代の…
  • 8
    「リラックス」は体を壊す...ケガを防ぐ「しなやかな…
  • 9
    中国ネトウヨが「盗賊」と呼んだ大英博物館に感謝し…
  • 10
    上野公園「トイレ騒動」に見る、日本のトイレが「世…
  • 1
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率が低い」のはどこ?
  • 2
    上野公園「トイレ騒動」に見る、日本のトイレが「世界一危険」な理由
  • 3
    世界初で日本独自、南鳥島沖で始まるレアアース泥試掘の重要性 日本発の希少資源採取技術は他にも
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    正気を失った?──トランプ、エプスタイン疑惑につい…
  • 6
    韓国『日本人無料』の光と影 ── 日韓首脳が「未来志向…
  • 7
    母親が発見した「指先の謎の痣」が、1歳児の命を救っ…
  • 8
    「高額すぎる...」ポケモンとレゴのコラボ商品に広が…
  • 9
    ピラミッドよりも昔なのに...湖底で見つかった古代の…
  • 10
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 6
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 7
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 8
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 9
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 10
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中