最新記事
0歳からの教育

スマホやタブレット、2歳以上なら子供にプラスになる場合も

Tips for Managing Screen Time

2021年12月14日(火)18時20分
ブレー・アン・マッカーサー(カルガリー大学子供発達因子研究所博士研究員)、シェリー・マディガン(同研究主任、准教授)
タブレットを見る幼児

幼い子供の長過ぎるスクリーン使用が発達に悪影響を及ぼす可能性が研究で示されている LEUNGCHOPAN-SHUTTERSTOCK

<コロナ禍で親子共に増えてしまいがちなスクリーンタイム(電子機器の画面視聴)。教育用コンテンツなら問題ないのか。どんな用途なら脳の発達に役立つのか。研究で分かっていることは>

新型コロナウイルスのパンデミック下では、これまでの習慣が変わったり崩れたりしてしまうのも無理はない。

保育園や学校が休みになり、親は自宅でリモートワークを強いられ、ソーシャルディスタンスを日々心掛け、子供たちは友達と遊ぶこともままならない。

だから、子供も大人もテレビやデバイス、タブレット、ビデオゲームなどのスクリーンを見る時間がいつもより増えてしまうのはうなずける。

さらには、2~5歳の子供は1日1時間まで、1歳半までの乳幼児は0時間に(ただし親しい人とのビデオチャットの時間は除く)、との推奨時間をオーバーしてしまうのも仕方ないだろう。

児童心理学者でありスクリーンタイムについて研究する筆者らは、前例のないこの状況下で子供のスクリーンタイムをどう管理したらいいか、と悩める親たちからよく質問を受ける。

さらに彼らはこう聞いてくる。「何時間を超えたらアウトなの?」「電子機器使用が役に立つ場合もあるの?」

そこで、研究結果に基づいて、幼い子供のベストな電子機器の使用法をアドバイスしよう。

質の高い教育プログラムを選ぶ

2歳以上の子供なら、スクリーンタイムがプラスになる場合もある。筆者の研究では、『セサミストリート』のように教育目的で開発されたプログラムは、子供の言語能力の発達にわずかながら役立つ可能性があることが示された。

質の高いプログラムは、明確なストーリー展開と幼児の発達段階に合わせた内容で、幼児のニーズに応えるよう調整されている。しばしば物の名前を呼んだり視聴者に直接語り掛けたりすることで、新しい言葉や音を学ぶ助けになる。

たとえ教育用コンテンツであっても、2歳以下の場合にはスクリーンから学ぶことはほとんどないことが研究で示唆されている。

だから、2歳以下の子供は家族や友達とのビデオチャットのみに使用を限定するか、10~15分のごく短時間の一時的な使用にとどめよう。

親も一緒に参加する

 

子供と保護者がスクリーンを一緒に見ると、子供が新しい言葉を覚える可能性が高まるようだ。

一定のコンテンツに子供の関心を直接引き付け、画面上に見えるものについて話し合い、学んだことを日々の出来事と関連付けることで、学びを促進してやれる可能性がある。

つまり、できる限り子供と一緒に座り、そろってメディアを楽しむことだ。

画面上に見えるものについて話し、イエスかノー以外で答えられる興味深い質問を投げ掛けて考えさせよう(「今日はXちゃんに何が起こった?」「Xちゃんは悲しんでるね。あなたはどう思う?」)。画面上のものを言い表したり名称を言ったりするのもいい(「ドーラはリュックを背負って紫色のブーツを履いてるね!」)。

スクリーンを人と人との結び付きのために使う

 

小児科のガイドラインでは、乳幼児の場合でも家族や友達や親しい人とのビデオチャットを行うことは推奨されている。社会的つながりは子供にとって重要であり、デバイスの使い方としても健全だとみられている。

パンデミックの間は、離れて暮らす家族や隣人、友人と社会的つながりを維持するために積極的に連絡を取るよう心掛けよう。

ビデオチャットの相手に、わが子と一緒に歌ったり踊ったり、絵本の読み聞かせをしてもらうのもいい。

スクリーンタイムと他の活動のバランスを取る

 

両親や兄弟姉妹、祖父母との交流や会話に熱中しているとき、子供は最も学んでいる。

こうした「双方向のやりとり」は、脳の発達のための構成要素になる。コロナ禍の間は、子供の脳と体を育てる双方向のやりとりをたっぷりしてやろう。

この状況下では親もスクリーンタイムの制限をつい緩めてしまっているかもしれないが、ルールを全て放り出すのは考えもの。

特に幼少期の長過ぎる画面視聴が、脳の発達を妨げ、(歩く、話す、書くなどの)発達段階の遅れにつながる可能性が研究で示されている。

効果的なのは、就寝、食事、読書や学習、家族の時間などのオフラインの活動と同じく、オンラインにもスケジュールを設けることだ。

また、就寝前の画面視聴は睡眠に悪影響を与える可能性がある。計画を立てるときには就寝前60分はデバイス禁止タイムにしよう。

親が健康的なデバイス習慣の手本になろう

 

誰もが新型コロナ関連のニュースやSNSに苦しめられている今、自覚もないままデジタルの世界に溺れ、デバイス使用に時間を奪われがち。

最新情報を追いたい気持ちはあっても、親自身がメディア使用の状況を見直すことが重要だ。親のスクリーンタイムが子供の使用にも影響し、親子の双方向のやりとりも阻害する可能性があるからだ。

親は、健康的なデバイス習慣を示すことで子供の手本になることができる。休憩時間をつくり、デバイス抜きの活動(読書や料理、食事、ウオーキングなど)を優先する姿勢を見せるといい。

最後に、子供に新型コロナについて話すこともあるだろうが、テレビやネットの報道にさらすのは避けること。不穏なニュースを頻繁に目にすると、子供のストレスレベルは上昇してしまう。

パンデミックはいずれ終わる時が来るはずだが、先の見えない不確かな時期に、子供たちに正しいスクリーン使用を手ほどきしてやることは重要だ。

The Conversation

Brae Anne McArthur, Postdoctoral Research Fellow, Determinants of Child Development Lab, University of Calgary and Sheri Madigan, Associate Professor, Canada Research Chair in Determinants of Child Development, Owerko Centre at the Alberta Children's Hospital Research Institute, University of Calgary

This article is republished from The Conversation under a Creative Commons license. Read the original article.

0sai_2022_mook_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

ニューズウィーク日本版SPECIAL ISSUE「0歳からの教育2022」が好評発売中。3歳までにすべきこと、できること。発達のメカニズム、心と体、能力の伸ばし方を科学で読み解きます

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ウクライナ協議の早期進展必要、当事国の立場まだ遠い

ワールド

中国が通商交渉望んでいる、近いうちに協議=米国務長

ビジネス

メルセデス、2027年に米アラバマ工場で新車生産開

ワールド

WHO、成人への肥満症治療薬使用を推奨へ=メモ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 5
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単…
  • 6
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 7
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 8
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 9
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 10
    インドとパキスタンの戦力比と核使用の危険度
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中