最新記事

0歳からの教育 みんなで子育て

どう違う? 日本・韓国・中国「祖父母の孫育て」体験記

IT REALLY DOES TAKE A VILLAGE

2020年3月26日(木)18時10分
李娜兀(リ・ナオル、国際交流コーディネーター・通訳)

中国では地方在住の祖父母やシニア世代のベビーシッターに支援を頼むことも REUTERS

<3カ国を行き来し、シニア世代の力を借りながら子育てをして見えてきた各国祖父母の苦労と現実。本誌「0歳からの教育 みんなで子育て」特集より>

20200331issue_cover200.jpgわが家の高校生の長女は福島県生まれ、小学生の次女は中国・北京生まれだ。日中2つの大学院に通うなどしつつ日本と中国、韓国を2~3年置きに引っ越ししながらの子育ては、韓国人である私の母、日本人の夫の母、それに北京では中国人ベビーシッターの助けなしには難しかった。

北京のベビーシッターの女性は、私より20歳ほど年上だったので、私は日韓中シニア世代の助けを借りた子育てを実践してきたともいえる。そうした経験や知人・友人の状況を踏まえ、日中韓の「祖父母の孫育て」事情について考えてみたい。

◇ ◇ ◇

優雅な韓服姿の中高年女性がうれしそうに拍手していたと思ったら、次の場面では泣きわめく孫をおんぶして食事の支度をしている。普段着にぼさぼさ頭で、ゆがんだ表情。そこに「子育て作業の終わり、そして子供の子供を育てる作業の始まり」という字幕が映し出される。2015年頃、韓国で流れたマンション建設会社のテレビCMだ。

わが子の結婚式に出席した女性の華やかで幸せそうな様子と、その直後に始まる「孫育て」のしんどさを映像で対比させたCMは、「リアル過ぎる」と話題になった。添えられた「子育て農作業」という意味の慣用句も、その苦労を強調している。CMに賛否両論が巻き起こったのは、そのリアルさが共感を呼ぶ一方で、孫を持つ世代には負担の重さを、そして子供の世話を親に任せている世代には「親に申し訳ない」という罪悪感を思い起こさせたからだ。

こうした祖父母は韓国にどのくらいいるだろうか。韓国で0~6歳の子供を持つ2500世帯を対象にした「2018年全国保育実態調査」(育児政策研究所)によると、祖父母から何らかの育児支援を受けている家庭は37.8%だった。

韓国の「オリニチプ」と呼ばれる保育園は、専業主婦でも子供を預けられる半面、午後5時までの所が多い。働く女性にとっては迎えに行く時間が早過ぎるので、やはり誰かの助けが必要になる。そこで祖父母の出番ということになるようだ。

こうした祖父母による孫育てのことを「黄昏(ファンホン)育児」と呼ぶ。黄昏育児は祖父母世代にとって生きがいになる半面、前述のCMのように負担やストレス、教育方針の違いからくる子供との摩擦などネガティブな影響も話題になる。ある研究によると、韓国の場合、こうした影響は教育や収入の水準によって違うという。余裕がある家庭では、孫の面倒を見る祖父母にとっても快適な住環境を準備できるほか、気分転換の方法も多様だからだ。建設会社がCMで強調しようとしていたのも、まさにその点。「しんどい孫育児は、快適な環境で」というわけだ。

同居率の高さもストレスに

一方、日本では世代を超えて比較的、「祖父母の子育て」に肯定的な認識を持っている人が多いように見える。全国20~79歳の3000人を対象とした内閣府の「家族と地域における子育てに関する意識調査」(2014年公表)によれば、子供が小学校に入学するまでの間、祖父母が育児の手助けをすることが望ましいかとの設問に「望ましい」と答えた割合が78.7%に達している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

アングル:注目浴びる米地区連銀総裁の再任手続き、ト

ワールド

焦点:ノルウェー政府系基金、防衛企業の投資解禁か 

ビジネス

三菱UFJが通期上方修正、資金利益や手数料収入増加

ビジネス

JPモルガン、ドバイ拠点強化 中東の中堅企業取り込
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 3
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前に、男性が取った「まさかの行動」にSNS爆笑
  • 4
    文化の「魔改造」が得意な日本人は、外国人問題を乗…
  • 5
    「水爆弾」の恐怖...規模は「三峡ダムの3倍」、中国…
  • 6
    『トイ・ストーリー4』は「無かったコト」に?...新…
  • 7
    中国が進める「巨大ダム計画」の矛盾...グリーンでも…
  • 8
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 9
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 10
    ファン激怒...『スター・ウォーズ』人気キャラの続編…
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 5
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 8
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 9
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 10
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中