最新記事

日本社会

ここまでやる!? 旅から生活まで、「車中泊」の奇想天外な利用実態

2019年4月2日(火)13時30分
中川 寛子(東京情報堂代表) *東洋経済オンラインからの転載

newsweek_20190402_130346.jpg

最近では住宅並みの性能、見た目重視のトレーラーハウスも(写真:筆者撮影)

イベントには実際にバンで暮らす「バンライファー」が多数集まった。たとえば、つくば市の担当者が1年前に出会い、イベント開催のきっかけになったという渡鳥ジョニー氏は2018年春から永田町のシェアオフィスの駐車場に置いたバンで暮らしている。離婚を機に10年ぶりに戻った東京で家賃の高さや、満員電車にうんざりし、人生に最低限必要なモノは何かを自問自答した結果、それほど多くはないことに気づき、以前から気になっていたバンでの暮らしを選択したという。

10年前と違い、都会ではさまざまなものをシェアする暮らしができる。オフィスやキッチンはシェアオフィスで、洗濯はランドリーサービスで、風呂はジムで、ネットはスマホ、電源はカフェでと考えると、自宅に必要な機能はさほど多くはない。コーヒー、音楽、上質なベッドがあればいいと割切れば中古のバンで十分なのである。

6人乗りバンをDIYし、旅しながら暮らす

しかも、思いついたら好きな場所に移動することもできる。海を眺めながら、鳥のさえずりを聴きながら仕事することも、仕事帰りに温泉に寄ることもでき、眠くなったらそのまま寝てしまえばいい。書いていてうらやましくなる暮らし、働き方である。

渡鳥氏よりもさらに移動を常としてバンに暮らしている人たちもいる。2年前にトラベルオーディオアプリ「ON THE TRIP」というサービスを立ち上げた成瀬勇輝氏と志賀章人氏だ。観光地に滞在して取材するとなると宿泊費や交通費が高くつくが、バンをオフィス兼住宅にしてしまえば金銭的な問題が解決する。そこで6人乗りのバンをDIY、旅しながら仕事をし、暮らしているという。

1カ所での滞在は1~2カ月というが、オフィス(!)の面白さに興味を持ち、取材した人たちをはじめ、地元の人たちがバンを訪ねてくることも多く、ホテル滞在時とは違う、深い付き合いになるという。これこそ、まさに関係人口増である。

先端の暮らしを実践する人たちの話を聞いていて思ったのは最近増えている二拠点居住、多拠点居住にバンライフを組み合わせれば関係人口増に加え、空き家などの地域の問題にも解決の糸口が見えるのではないかということだ。

例えば空き家問題については、1人が複数の家を使うという考え方がある。地方の家賃や、住宅価格が下がればほかの地域から「別宅」を求めてくるようになるかもしれないが、そこで問題になるのは移動にかかる費用と時間だ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

2回目の関税交渉「具体的に議論」、次回は5月中旬以

ビジネス

日経平均は続伸で寄り付く、米国の株高とハイテク好決

ビジネス

マイクロソフト、トランプ政権と争う法律事務所に変更

ワールド

全米でトランプ政権への抗議デモ、移民政策や富裕層優
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 5
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 6
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 7
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単…
  • 8
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 9
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 10
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中