最新記事

日本社会

ここまでやる!? 旅から生活まで、「車中泊」の奇想天外な利用実態

2019年4月2日(火)13時30分
中川 寛子(東京情報堂代表) *東洋経済オンラインからの転載

newsweek_20190402_125753.jpg

宮下氏が座っているのは軽トラの荷台部分を利用したもので2人分のベッド、仕事用のデスク、収納式のソファ、エアコン、バッテリーが備え付けられており、断熱性能も高い(写真:筆者撮影)

しかも、このビジネス開始にあたり、三井住友海上火災保険が車中泊旅行者、車中泊事業者向けの保険を業界に先んじて開発し、自動的に付帯する仕組みに。これにより、貸す側、借りる側とも安心して車中泊ができるようになった。

訪日客の困りごと解決から思いついたサービスだったわけだが、このサービスが変えるのはそれだけにとどまらない。

「地方の花火大会やコンサートなど一時的に多くの人が集まるイベントで宿泊施設が足りない場合、あるいはそもそも宿のない場所でもCarstayを導入すれば、一時的に安価に宿泊場所を増やせる。日帰り客より宿泊客が多くお金を落とすことを考えれば、経済効果は大きいはずです」(宮下氏)

定住者ではなく、関係人口を増やす

公共交通機関利用の旅と違い、車での旅には時間の制約がない。そこに泊まるという機能が加われば、旅はさらに自由になる。好きなときに好きな場所に行き、そこに好きなだけ滞在できるようになるのだ。

とすれば、車中泊には地方に人を移動させ、活性化させる力があると言える。車に泊まれるなら、公共交通機関のない、宿もない場所にも行ける。それに泊まれるなら、そこで働ける、暮らせるということにもなる。

Wi‐Fiさえあれば働ける人が増えている今、車中で仕事をする人、なんだったら、そのまま車中で暮らそうという人が出てきても不思議はないのだ。その人たちがあちこちを移動しながら暮らすとしたら、それによって地方は定住とは異なるものの、その地域に関心や愛着を持ち、関わってくれる人の数=関係人口を増やせるのではなかろうか。

実際、そこに思い至り、イベントを開いた自治体がある。茨城県つくば市だ。2019年3月21~22日に開かれたのは「VANLIFE(バンライフ)」をテーマにした「つくばVAN泊2019」なるイベント。バンライフとはバンタイプの車で働き、暮らす人たちやライフスタイルのことである。

つくば市は「世界のあしたが見えるまち」を標榜しており、同イベントはこれからの生活、社会を考えるための実験の1つ。具体的に意図したのはズバリ、関係人口の増加。つくば市の人口はつくばエクスプレス沿線では増加しているが、広大な市内では人口減少、高齢化、少子化が進むエリアがある。そうしたエリアで関係人口を増やすためにはバンライフを送る人達に選ばれるまちという手があるのではないかという考えである。

newsweek_20190402_131434.jpg
newsweek_20190402_131438.jpg

現在の不動産の在り方への
アンチからバンライフを考えるアーティストも(写真:筆者撮影)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏がMRI検査、理由明かさず 「結果は完璧

ワールド

米中外相が電話会談、30日の首脳会談に向け地ならし

ワールド

アルゼンチン大統領、改革支持訴え 中間選挙与党勝利

ワールド

メキシコ、米との交渉期限「数週間延長」 懸案解決に
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 2
    庭掃除の直後の「信じられない光景」に、家主は大ショック...ネットでは「ラッキーでは?」の声
  • 3
    「平均47秒」ヒトの集中力は過去20年で半減以下になっていた...「脳が壊れた」説に専門家の見解は?
  • 4
    熊本、東京、千葉...で相次ぐ懸念 「土地の買収=水…
  • 5
    「信じられない...」レストランで泣いている女性の元…
  • 6
    中国のレアアース輸出規制の発動控え、大慌てになっ…
  • 7
    「宇宙人の乗り物」が太陽系内に...? Xデーは10月2…
  • 8
    シンガポール、南シナ海の防衛強化へ自国建造の多任…
  • 9
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した…
  • 10
    「死んだゴキブリの上に...」新居に引っ越してきた住…
  • 1
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 2
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 3
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 4
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した…
  • 5
    超大物俳優、地下鉄移動も「完璧な溶け込み具合」...…
  • 6
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 7
    熊本、東京、千葉...で相次ぐ懸念 「土地の買収=水…
  • 8
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 9
    【2025年最新版】世界航空戦力TOP3...アメリカ・ロシ…
  • 10
    シンガポール、南シナ海の防衛強化へ自国建造の多任…
  • 1
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 2
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 9
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中