最新記事

日本社会

ここまでやる!? 旅から生活まで、「車中泊」の奇想天外な利用実態

2019年4月2日(火)13時30分
中川 寛子(東京情報堂代表) *東洋経済オンラインからの転載

newsweek_20190402_130731.jpg

マイクロバスを改装。水をリサイクルして使う仕組みも導入(写真:筆者撮影)

あらゆる交通費をまとめて月額定額制にするなど大胆な施策があれば、人は移動するようになると思うが、それはあくまでも個人の妄想。行政がそんなことを考えるわけはないだろうから、現実的なのは車利用である。泊まれる車で仕事しながらなら長時間の移動も無駄にはならない。さらに自動運転が実現したら、寝ているうちに別宅に到着という日がくるかもしれない。

もちろん、問題も多数ある。不動産を所有するという経済的、精神的な負担からは自由になるものの、モノへの執着も同時に断ち切らなければバンライフは難しい。最近では断熱材をしっかり入れた一般の住宅以上の性能のあるモバイルハウスも出てきてはいるものの、それ以外では夏は暑く、冬は寒い。ソーラーパネル普及で電気はだいぶ、自由になったというが、まだまだバッテリーは高く、性能も十分ではないという声もある。

オフィス、サウナ、スナックに使っている人も

さらに現時点ではどうしようもないのが水とトイレ。とくにトイレ問題は大きく、バンライファーに女性が少ないのはそのためだ。ポータブルトイレもあるが、狭い空間でのにおい、衛生面の問題を考えると現状の商品では無理がある。

研究機関の集まっているつくばである、一瞬にして排泄物が分解されて粉末になるような技術を開発してくれたりはしないだろうか。災害時にもトイレ問題が深刻であることを考えると、これは決して冗談ではない。バンライフを快適にする技術は災害時の避難生活を快適にする技術でもあるのだ。

また、1人でのバンライフは快適だとしても、それが2人になり、子ども連れになったときにどうするか。住民票や税金その他行政的な問題も多々あるはずで、すべてがすべてバラ色とは思わないが、バンライフに未来の暮らしの糸口があることは確かだ。そこに目をつけ、かつ1985年のつくば科学万博をもじったイベントを開いたつくば市の慧眼(けいがん)には参加者同様、敬意を表したいところである。

ちなみにイベントではバンをオフィス、サウナ、ライブ演奏の舞台、スナックなどとして使っている人が参加しており、ほかの場所では茶室を見たこともある。かくあるべしを取っ払ってしまえば、車は想像以上に自由で楽しく、社会を変える力にもなる。それが売れないというのはどうしたことか。自動車メーカー各社もつくばVAN泊に参加すべきではなかったかと思う。

※当記事は「東洋経済オンライン」からの転載記事です。
toyokeizai_logo200.jpg

ニューズウィーク日本版 世界が尊敬する日本の小説36
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年9月16日/23日号(9月9日発売)は「世界が尊敬する日本の小説36」特集。優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

日経平均は反発、終値で初の4万5000円台 半導体

ビジネス

野村、年内あと2回の米利下げ予想 FOMC受け10

ワールド

米関税15%の履行を担保、さらなる引き下げ交渉も=

ワールド

林氏が政策公表、物価上昇緩やかにし1%程度の実質賃
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、日本では定番商品「天国のようなアレ」を販売へ
  • 2
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍、夜間に大規模ドローン攻撃 国境から約1300キロ
  • 3
    中国は「アメリカなしでも繁栄できる」と豪語するが...最新経済統計が示す、中国の「虚勢」の実態
  • 4
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ…
  • 5
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 6
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 7
    【クイズ】世界で最も「リラックスできる都市」が発…
  • 8
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 9
    中国経済をむしばむ「内巻」現象とは?
  • 10
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサイルが命中、米政府「機密扱い」の衝撃映像が公開に
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 6
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「なんて無駄」「空飛ぶ宮殿...」パリス・ヒルトン、…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中