最新記事

ヘルス

太陽の光を浴びて癌治療する日が来る? 最新研究が明かす免疫の謎

Cracking Immunity's Riddles

2019年1月11日(金)13時05分
スタブ・ジブ

newsweek_20190111_194525.jpg

TheCrimsonMonkey-iStock

不健康な食事は細胞に「記憶」される

ファストフードが「体に悪い」ことは誰でも知っている。ただし、体重の増加など明らかな変化だけでなく、やや分かりにくい影響もある。免疫系への長期的なダメージもその1つだ。

独ボン大学の研究グループによると、高脂肪・高カロリーの食事に対し、私たちの体は細菌に感染したときと同じような反応を示すことが分かった。高脂肪・高カロリーで食物繊維が少ない西洋式の食事を4週間にわたりマウスに与えたところ、全身に強い炎症反応が現れたのだ。「不健康な食事を続けたマウスは、血液中のある種類の免疫細胞が予想外に増加した」と、論文執筆者の1人、アネッテ・クライストは説明する。

言うまでもなく、不健康な食事を過剰に摂取すれば、さらに深刻な問題をもたらす。

「(不健康な食事を)ときどき取っても、大半の人にとって長期的な影響はない。ただし、慢性的に炎症反応にさらされると免疫機能が抑制され得ることと、一部の加工食品を長期的に摂取すると炎症反応を引き起こし得ることは証明されている」と、「栄養と食事のアカデミー(旧アメリカ栄養士学会)」の広報で食事療法士・栄養学者のジンジャー・ハルティンは言う。

クライストら研究チームは、マウスに西洋式の食事を4週間与えた後、通常の穀物中心の食事を4週間与えた。その間に急性の炎症はなくなったが、不健康な食事に合わせて遺伝子のプログラムが切り替わった免疫細胞は、多くがそのままだった。

「自然免疫系に記憶する機能があることは、最近発見されたばかりだ。感染すると、新しい攻撃により迅速に反応できるように、体の防御システムは警戒状態が続く」と、ボン大学自然免疫研究所のアイケ・ラッツ所長は言う。

「この研究は、私が毎日の仕事で実感していることを裏付けている。ジャンクフードを食べれば、ジャンクな体になる」と、健康に関するベストセラーも多い医師のフランク・リップマンも語る。

ジャンクフードはときどき恋しくなるものだが、何ごともほどほどが肝心だ。

以上、ジャニッサ・デルゾー

ニューズウィーク日本版 教養としてのBL入門
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年12月23日号(12月16日発売)は「教養としてのBL入門」特集。実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気の歴史と背景をひもとく/日米「男同士の愛」比較/権力と戦う中華BL/まずは入門10作品

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ホンダがAstemoを子会社化、1523億円で日立

ビジネス

独ZEW景気期待指数、12月は45.8に上昇 予想

ワールド

トランプ氏がBBC提訴、議会襲撃前の演説編集巡り巨

ビジネス

英総合PMI、12月速報は52.1に上昇 予算案で
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連疾患に挑む新アプローチ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 6
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 7
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 8
    アダルトコンテンツ制作の疑い...英女性がインドネシ…
  • 9
    FRBパウエル議長が格差拡大に警鐘..米国で鮮明になる…
  • 10
    「なぜ便器に?」62歳の女性が真夜中のトイレで見つ…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 7
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 8
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 9
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 10
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中