吉田修一の『国宝』は「原点」から生まれた...<長崎南高校の校区><旧市街>の記憶と風景とは?
『国宝』は、歌舞伎の世界の血縁や師弟に基づく濃厚な人間関係と、伝統の継承にまつわる悲喜劇を描きながら、その表現の核心=女形の芸能の極地で、伝統の革新を予感させるような「余白」に満ちている。
歌舞伎の女形たちの人生を、「仮名手本忠臣蔵」や「曾根崎心中」など義太夫(ぎだゆう)狂言を中心とした歌舞伎の演目と重ね合わせながら描いた重層的な作品であり、歌舞伎という伝統芸能の可能性を引き出した野心的な作品でもある。
本書では『国宝』をはじめとする吉田修一の代表作について、様々な文脈から分析することで、その魅力を伝えたい。
映画「国宝」が文学作品を原作とした日本映画として、歴史に残る大ヒットを記録し、『国宝』がベストセラーとなった背景には、吉田修一が作家として積み重ねてきた「文芸」の蓄積がある。この本を通して『国宝』以外の吉田修一作品にも関心を拡げてもらえることを願ってやまない。
酒井 信(Makoto Sakai)
1977年、長崎市生まれ。明治大学准教授。早稲田大学卒業後、慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科後期博士課程修了。博士(政策・メディア)。慶應義塾大学助教などを経て現職。専門は文芸批評・メディア文化論。著書に『松本清張はよみがえる』『現代文学風土記』(以上、西日本新聞社)、『吉田修一論』(左右社)、近著に『松本清張の昭和』(講談社)、『吉田修一と『国宝』の世界』(朝日新聞出版)などがある。
『吉田修一と『国宝』の世界』
酒井 信[著]
朝日新聞出版[刊]
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