最新記事
BOOKS

吉田修一の『国宝』は「原点」から生まれた...<長崎南高校の校区><旧市街>の記憶と風景とは?

2026年1月21日(水)15時05分
酒井 信 (明治大学准教授)
眼鏡橋

tunguyen1909-pixabay

<故郷・長崎という土地の記憶から立ち上がる、吉田修一が培ってきた文学について>

吉田作品を追ってきた同郷の気鋭の評論家・酒井信が記す、話題の作品徹底ガイド『吉田修一と『国宝』の世界』(朝日新聞出版)より「はじめに」を抜粋。


◇ ◇ ◇

吉田修一は芥川賞を受賞した現役の作家の中でも、幅広い年代の読者を獲得している。『悪人』『怒り』や『国宝』はベストセラーとなり、映画化された有名な作品も多い。

『悪人』は220万部を超え、映画版も妻夫木聡と深津絵里の主演で注目を集めた。映画「国宝」は日本の実写映画の興行収入で歴代最高額を記録し、社会現象となるほど人気を博している。映画「国宝」は、文学作品を原作とした映画として異例の大ヒットで、過去の名作を興行収入で圧倒している。

東野圭吾の「容疑者Xの献身」の49.2億円、小松左京の「日本沈没」の53.4億円、井上靖の「敦煌(とんこう)」の82億円、海音寺潮五郎の「天と地と」の92億円、堀辰雄と宮崎駿の「風立ちぬ」の120.2億円を大きく上回った。

その魅力は、エンターテインメント性と文学性の両立にあり、映画「国宝」の作品を下支えしているのも、領域を超えて培った確かな筆力によるところが大きい。

吉田修一は1968年生まれで、私にとっては長崎南高校の9学年上の先輩にあたる。この本『吉田修一と『国宝』の世界』では、長崎を起点とした『国宝』をはじめとした主要作について、作品紹介にとどまらず「読みを深める視点」を提供したい。

『国宝』は、長崎のやくざの一家で育った立花喜久雄(きくお)が、一家の零落を経験して逃れるように上方歌舞伎の世界に飛び込み、女形(おんながた)として大成していく物語である。

喜久雄は、京都や大阪の劇場で女形として芸を磨きながら、お笑い芸人や映画監督、相撲取りやIT企業の社長など様々な登場人物たちと関わりながら、高度経済成長期から現代にいたる歴史を歩んでいく。

事件
ニューズウィーク日本版メンバーシップ登録
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

昨年の訪日外国人旅行消費額、中国が2割強占め引き続

ビジネス

欧州は目を覚ます時、米関税脅威受け=仏中銀総裁

ビジネス

欧州経済、「新しい国際秩序出現」で深い見直し必要=

ビジネス

三菱自、岸浦氏が4月1日付で社長に 加藤社長は会長
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:「外国人問題」徹底研究
特集:「外国人問題」徹底研究
2026年1月27日号(1/20発売)

日本の「外国人問題」は事実か錯誤か? 7つの争点を国際比較で大激論

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    完全に「ホクロ」かと...医師も見逃した「皮膚がん」の写真がSNSで話題に、見分け方「ABCDEルール」とは?
  • 2
    ピラミッドよりも昔なのに...湖底で見つかった古代の船が明かす、古代の人々の「超技術」
  • 3
    中国のインフラ建設にインドが反発、ヒマラヤ奥地で国境問題が再燃
  • 4
    韓国が「モンスター」ミサイルを実戦配備 北朝鮮の…
  • 5
    「耳の中に何かいる...」海で男性の耳に「まさかの生…
  • 6
    「死ぬところだった...」旅行先で現地の子供に「超危…
  • 7
    【総選挙予測:自民は圧勝せず】立憲・公明連合は投…
  • 8
    飛行機よりラク? ソウル〜釜山「110分」へ――韓国が…
  • 9
    世界初で日本独自、南鳥島沖で始まるレアアース泥試…
  • 10
    韓国『日本人無料』の光と影 ── 日韓首脳が「未来志向…
  • 1
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率が低い」のはどこ?
  • 2
    上野公園「トイレ騒動」に見る、日本のトイレが「世界一危険」な理由
  • 3
    世界初で日本独自、南鳥島沖で始まるレアアース泥試掘の重要性 日本発の希少資源採取技術は他にも
  • 4
    ピラミッドよりも昔なのに...湖底で見つかった古代の…
  • 5
    韓国『日本人無料』の光と影 ── 日韓首脳が「未来志向…
  • 6
    正気を失った?──トランプ、エプスタイン疑惑につい…
  • 7
    「高額すぎる...」ポケモンとレゴのコラボ商品に広が…
  • 8
    世界最大の埋蔵量でも「儲からない」? 米石油大手が…
  • 9
    中国のインフラ建設にインドが反発、ヒマラヤ奥地で…
  • 10
    【銘柄】「住友金属鉱山」の株価が急上昇...銅の高騰…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 6
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 7
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 8
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 9
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 10
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中