『ミスティック・リバー』原作者による新作スリラー『スモーク』...放火の炎に潜む、人間の「業」を追う
Feeling the Heat
痛みを伴う真実の行方
レイフ・スポールが演じる刑事のスティーブン・バークは、権力と自尊心が容易に毒に変わることを体現している。彼がミシェルを放火捜査に異動させたのは、彼女に拒絶されたことへの報復だろう。
もっとも、スポールは一面的な解釈を否定する。「ひどい人間は、自分がひどい人間だと思っていない。自分は正しいことをしていると信じている。『スモーク』にはそんな人間があふれている」
「(スティーブンはミシェルを)狂おしいほど愛している。一方で、離婚協議中の父親でもある。自分の欲しいものが手に入らないということに慣れていないのだ。外見はアルファ男だが、内側はやわで──怯えている。男は泣かないもの、男は怒鳴るもの。それは怒りという形の悲嘆だ」
スモレットとのシーンはバチバチと火花が散ったと、スポールは続ける。「演技をぶつけ合い、相手を驚かせた。画面からあふれ出る化学反応を私たちは感じたし、観客にも感じてほしい」
ルヘインの作品を知っている人なら分かるとおり、彼は安易な勝利を描いたりはしない。「編集作業中は、気が付いたらデイブを応援していた」とルヘインは笑う。「私たちは何かを求めている登場人物に本能的に共感する。それが自己中心的な願望や、暗いものだったとしても」
製作総指揮も務めるエガートンは、ルヘインが登場人物を安易な類型に押し込んでいないことを称賛する。「こういう人物だと分かったつもりになった途端に、足をすくわれるような展開になる。そういうとき、自分が役に入り込めていると感じる」





