最新記事
BOOKS

沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はもはや「味噌汁」ではない

2024年11月16日(土)10時25分
印南敦史(作家、書評家)

そうしたプロセスを経てさまざまな国の影響を受けてきた沖縄の人々に接するのは、ナイチャー(沖縄県外の日本人すべてを指すことが多い)にとって困難であり、違和感を抱えるのも当然なのだ。

もちろん、ウチナーンチュ(沖縄の人)にとってもそれは同じだろう。お互いに、ストレスがたまってしまう関係性だということだ。

沖縄出身である著者自身、大学卒業後に東京の証券会社で働いたのち沖縄に戻ってきたときには、かなりのカルチャーショックを受けたそうだ。仕事の質や進め方、対人関係など、ひとつひとつのことに違和感を抱いたというのである。

沖縄の人ですらそうなのだから、内地の人に心労がたまっても無理はない。しかも、両者ともに自身のバックグラウンドに従って生きてきただけなのだから、どちらかが悪いわけでもない。

だから厄介であるわけだが、そこで本書において著者は、さまざまな疑問の背景にある"沖縄の人の考え方"を解説しているのである。いくつかピックアップしてみることにしよう。

「テーゲー」思考のススメ

沖縄文化を表現することばのひとつとして、著者は「テーゲー」を挙げる。「大概」に由来する方言らしいが、つまりは物事を徹底的に突き詰めて考えず、"ほどほどの加減"で生きていこうという概念である。

だが内地の人間にとってそれは、仕事がいい加減など、ネガティブな印象につながりやすくもあるだろう。


 しかし、大城太『最強のうちなーシンキング』では、70点主義者のテーゲーだからストレスが溜まらない、華僑と同様の思考である、独りよがりの完璧を目指して疲れるよりも、スピードを重視して、ある程度の出来の段階で確認を入れて進めるのがネット時代の仕事の仕方と説いている。日本はものづくり国家ゆえか、完璧に仕上げようという意識が強い国民性だと思うが、沖縄のほうが世界感覚に近いのかもしれない。(33ページより)

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

VW、来週も国内生産継続 ネクスペリア巡る混乱「差

ビジネス

午前の日経平均は続伸一時5万2000円台、ハイテク

ビジネス

イーライリリーの新経口肥満症薬、FDAの新迅速承認

ワールド

独政府、国内ロスネフチ事業の国有化検討 米制裁受け
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 5
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 6
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 7
    海に響き渡る轟音...「5000頭のアレ」が一斉に大移動…
  • 8
    必要な証拠の95%を確保していたのに...中国のスパイ…
  • 9
    【クイズ】12名が死亡...世界で「最も死者数が多い」…
  • 10
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」にSNS震撼、誰もが恐れる「その正体」とは?
  • 4
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した…
  • 5
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 8
    超大物俳優、地下鉄移動も「完璧な溶け込み具合」...…
  • 9
    熊本、東京、千葉...で相次ぐ懸念 「土地の買収=水…
  • 10
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ…
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 8
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 9
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中