最新記事
健康

チーズはこれからもっと健康になる...3つの新種プロバイオティクスが発見される【最新研究】

Scientists Reveal Cheeses With Untapped Health Benefits

2024年9月15日(日)10時25分
ハッティ・ウィルモス
チーズ

lipefontes0-pixabay

<プラトチーズやミナスチーズなどブラジルの伝統的なチーズから3種の新たな菌株が発見され、ヒトが消費しても安全であることも確認された>

ブラジルの微生物学者が、従来のチーズから3種類の新たなプロバイオティクスの菌株を発見した。このことにより、チーズがより健康的な食品になる可能性が出てきた。

プロバイオティクスとは生きた微生物であり、食品として摂取した際に腸内にとどまるとされる。腸内に多くの種類のプロバイオティクスや酵母を持つ人は、健康的な腸内フローラを持っており、健康的なメンタルや強固な免疫システムを持ち、規則正しい排便、そして慢性疾患など多くの病気のリスク低下につながるとされる。

【関連動画】国際的な評価が高いブラジル産チーズを作る小さな町「アラゴア」 を見る


 

そのプロバイオティクスは、コンブチャ、味噌、ザワークラウト、ケフィア、ギリシャヨーグルトや漬物など多くの発酵食品に含まれている。

サンパウロ州農業供給局・食品技術研究所の研究者たちは、プラトチーズやミナスチーズなどブラジルの伝統的なチーズから3種の新たな菌株を発見。分析した結果、プロバイオティクス食品で広く使用されている「ラクトバチルス属」に属していることが確認された。

この研究の筆頭著者である、食品科学者のクリスティアン・マウリシオ・バレット・ピニージャは、「これらの3つの菌株は発酵特性、酵素活性、感覚特性が最も優れている」と述べる。

45日間の熟成期間中に細菌や香りや味がどのように変化したかを分析した結果、3種類の菌株のいずれも脂肪酸やタンパク質の変化の点で、チーズの組成に大きな影響を与えないことが判明。ヒトが消費しても安全なプロバイオティクスであることも確認されている。さらなる調査研究がまだ必要であるとした上で、病原菌の増殖の抑制も観察されたという。

これらの菌株を含むチーズは、熟成期間が長くなるにつれて不要な揮発性化合物(VOC)のレベルが低下することも確認されている。また、25日以上の長期保存中も品質を維持することが確認できたことは、多様な風味が大切なチーズにとっては重要な点である。

さらにこの新種の菌株は技術的に生産しやすいことに言及した上で、「この研究分野の成長は見込まれているものの、多国籍企業が支配するチーズ業界が妨げになっている」とバレット氏は述べる。

大企業がプロバイオティクスの培養技術を持っている一方で、中小企業も自力で生産できるようになることが市場で競争力を持つためには重要だという。

これらの新しい菌株はチーズ製造に適しており、消費者の健康にも役立つ。しかし、商業利用にはさらなる研究が必要だという。

【参考文献】
Barreto Pinilla, C. M., Brandelli, A., Ataíde Isaia, H., Guzman, F., Sundfeld da Gama, M. A., Spadoti, L. M. & Torres Silva e Alves, A. (2024). Probiotic Potential and Application of Indigenous Non-Starter Lactic Acid Bacteria in Ripened Short-Aged Cheese. Current Microbiology, 81(7), 202.

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

中国万科の債券価格が下落、1年間の償還猶予要請報道

ビジネス

午前の日経平均は反発、大幅安の反動 ハイテク株の一

ワールド

イタリア製造業PMI、11月は節目の50超え 2年

ワールド

原油先物続伸、米・ベネズエラ緊張など地政学リスクで
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「世界一幸せな国」フィンランドの今...ノキアの携帯終了、戦争で観光業打撃、福祉費用が削減へ
  • 2
    【クイズ】1位は北海道で圧倒的...日本で2番目に「カニの漁獲量」が多い県は?
  • 3
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果のある「食べ物」はどれ?
  • 4
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 5
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 6
    中国の「かんしゃく外交」に日本は屈するな──冷静に…
  • 7
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 8
    600人超死亡、400万人超が被災...東南アジアの豪雨の…
  • 9
    メーガン妃の写真が「ダイアナ妃のコスプレ」だと批…
  • 10
    トランプ支持率がさらに低迷、保守地盤でも民主党が…
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 3
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 4
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体…
  • 5
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 6
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 7
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 8
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 9
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 10
    子どもより高齢者を優遇する政府...世代間格差は5倍…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中