最新記事
スキャンダル

天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無能の専門家」の面々

Ohtani’s Betrayed Trust

2024年4月15日(月)14時30分
アレックス・カーシュナー(スポーツライター)
水原一平 大谷翔平

水原(左)はほぼ常に大谷にぴったり寄り添ってきた(2023年12月) KIRBY LEEーUSA TODAY SPORTSーREUTERS

<「友人」を装ったあくどい元通訳による24億円窃盗事件で明らかになったのは、「天才」を取り巻く専門家たちが全員「凡才」だったこと>

渦中の人は毅然としていた。

MLB(米大リーグ)ロサンゼルス・ドジャースの大谷翔平は、自分の銀行口座から違法なスポーツ賭博のブックメーカー(賭け屋)に巨額の資金が送られていた問題で、3月25日に会見を開き、自分の口で状況を説明した。

それまでは、大谷の側近も球団も矛盾する説明をしていたために、騒動は日米のメディアを巻き込んで、雪だるま式に大きくなっていった。

だが、大谷の説明はシンプルだった。賭博で莫大な負債を抱え込んだ元通訳の水原一平が大谷の知らないところで賭け屋に送金していたこと、つじつまを合わせるために周囲に嘘をついていたことなどだ。

だが、4月11日に水原を訴追した米連邦地検の説明は、はるかに悪質な事件を物語っていた。

まず、水原が大谷の口座から勝手に引き出していた金額は、当初よりもずっと多い1600万ドル(約24億5000万円)以上だった。そんな金額の窃盗に倫理的な方法などあるはずもないが、水原のやり口は予想以上にあくどかったようだ。

水原は電話で大谷に成り済まして、大谷の口座からの送金を許可していたほか、銀行からの取引通知やセキュリティーアラートが自分の電話やメールアドレスに送られてくるように細工していた。

そんなことが可能だったのは、水原の特殊な立場のおかげだ。彼は大谷の通訳だっただけでなく、仕事でもプライベートでも距離の近い友人であり、日本語でコミュニケーションを取る大谷と、英語で仕事をする銀行や資金アドバイザーとの仲介者でもあった。

つまり大谷は、これまでの報道よりもずっと重大かつ多面的な被害者だったわけだ。彼の唯一の過ちは、自分をペテンにかけた通訳や、混乱に拍車をかけた広報担当者など、間違った人間をプロとして雇い、信頼し、たんまり報酬を払っていたことだ。

とんでもない「二枚舌」

大谷は、自分の会計チームが資産をきちんと監視していると信じていた。だが、二枚舌ならぬ2カ国語を操る通訳を通したために、おかしなことになった。

訴追状に添付された起訴状案によると、水原は最初から大谷の銀行口座に関わっていた。2018年、アメリカに渡ったばかりの大谷に付き添ってアリゾナ州の銀行に行き、そこで野球選手としての報酬が入る口座を開設させたのだ。

だが水原は、MLBにおける大谷の代理人であるネズ・バレロに口座情報を教えなかった。大谷が秘密にしたがっていて、会計チームにも監視されたくないと言っていると説明したのだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

FRBの9月利下げ観測高まる、5月CPIで物価圧力

ビジネス

米CPI、5月は前年比3.3%上昇 予想下回る 前

ワールド

中国で記録的高温、アジア各国が猛暑に警戒

ビジネス

ECB利下げ、「極めて緩慢」に進める必要=デギンド
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:姿なき侵略者 中国
特集:姿なき侵略者 中国
2024年6月18日号(6/11発売)

アメリカの「裏庭」カリブ海のリゾート地やニューヨークで影響力工作を拡大する中国の深謀遠慮

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    接近戦で「蜂の巣状態」に...ブラッドレー歩兵戦闘車の猛攻で、ロシア兵が装甲車から「転げ落ちる」瞬間

  • 2

    毎日1分間「体幹をしぼるだけ」で、脂肪を燃やして「勝手にやせていく体」をつくる方法

  • 3

    早期定年を迎える自衛官「まだまだやれると思っていた...」55歳退官で年収750万円が200万円に激減の現実

  • 4

    長距離ドローンがロシア奥深くに「退避」していたSU-…

  • 5

    謎のステルス増税「森林税」がやっぱり道理に合わな…

  • 6

    【衛星画像】北朝鮮が非武装地帯沿いの森林を切り開…

  • 7

    バイデン放蕩息子の「ウクライナ」「麻薬」「脱税」…

  • 8

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃が妊娠発表後、初めて公の場…

  • 9

    たった1日10分の筋トレが人生を変える...大人になっ…

  • 10

    堅い「甲羅」がご自慢のロシア亀戦車...兵士の「うっ…

  • 1

    早期定年を迎える自衛官「まだまだやれると思っていた...」55歳退官で年収750万円が200万円に激減の現実

  • 2

    認知症の予防や脳の老化防止に効果的な食材は何か...? 史上最強の抗酸化物質を多く含むあの魚

  • 3

    接近戦で「蜂の巣状態」に...ブラッドレー歩兵戦闘車の猛攻で、ロシア兵が装甲車から「転げ落ちる」瞬間

  • 4

    我先にと逃げ出す兵士たち...ブラッドレー歩兵戦闘車…

  • 5

    カラスは「数を声に出して数えられる」ことが明らか…

  • 6

    「世界最年少の王妃」ブータンのジェツン・ペマ王妃が…

  • 7

    堅い「甲羅」がご自慢のロシア亀戦車...兵士の「うっ…

  • 8

    「クマvsワニ」を川で激撮...衝撃の対決シーンも一瞬…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃が妊娠発表後、初めて公の場…

  • 10

    毎日1分間「体幹をしぼるだけ」で、脂肪を燃やして「…

  • 1

    ラスベガスで目撃された「宇宙人」の正体とは? 驚愕の映像が話題に

  • 2

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 3

    ウクライナ水上ドローンが、ヘリからの機銃掃射を「回避」してロシア黒海艦隊に突撃する緊迫の瞬間

  • 4

    「世界最年少の王妃」ブータンのジェツン・ペマ王妃が…

  • 5

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 6

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃の「マタニティ姿」が美しす…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発…

  • 9

    我先にと逃げ出す兵士たち...ブラッドレー歩兵戦闘車…

  • 10

    早期定年を迎える自衛官「まだまだやれると思ってい…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中