最新記事
韓国社会

BTSメンバーの入隊を「最強兵器」に使っても、韓国軍が抱える問題は変わらない

POP STARS AS WEAPONS

2023年4月5日(水)12時48分
サイラス・ジン

230411p42_BTS_03.jpg

JINの入隊を見送ろうと新兵教育施設前に集まったファンら(22年12月13日) HEO RANーREUTERS

第1に、世界的な大スターである彼らが兵役に従事すれば、兵役が韓国人男性の市民権の基礎をなすこと、そしてその義務が社会経済的な出自に関係なく、全ての男性に適用されることを内外に強調できる。

第2に、韓国国防省にとっては、軍の有害な文化を追放し、徴兵された若者たちが直面する多くの問題を是正する意欲をアピールするチャンスになる。

スター入隊で軍は変わらない

プレスリーと米軍の関係のように、JINと韓国軍も、彼の兵役中の写真を散発的にソーシャルメディアに投稿するなどして、双方のイメージアップに励んでいる。もちろん世界中のJINのファンは大喜びだ。

だが、スターと軍の協力がいいことずくめとは限らない。

プレスリーは60年に除隊後、凡庸な(しかし興行的には成功した)ハリウッド映画への出演が続いた。42歳で死亡したが、ジョン・レノンは、「エルビスは軍隊に入ったとき死んだ」と言った。

徴兵が、彼が精神的な苦しみを抱えるきっかけの1つになったことを考えると、それはまんざら的外れではない。

プレスリーを利用して新しい健全な組織をアピールしようとした米陸軍も、やがてベトナム戦争の泥沼に陥り、「米軍は冷戦に対応できる組織に生まれ変わり、兵役は人格形成に役立つ楽しい経験だ」という宣伝文句は無に帰した。

BTSのメンバーがプレスリーのような運命をたどるとは思えないが、韓国軍はプレスリーと米軍の経験から学ぶべきだろう。

スターが兵役に就くことは、軍にとって良い宣伝になるのは間違いない。だが、韓国軍が抱える真の問題を解決するためには、構造改革を根気強く進めていくしかない。

政府は、改革を断行すると言うが、本当に戦略的な目標に対応できる軍をつくりたいなら、マーケティング以外の領域にもっと力を入れる必要がある。

From Foreign Policy Magazine

ニューズウィーク日本版 英語で学ぶ国際ニュース超入門
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年5月6日/13日号(4月30日発売)は「英語で学ぶ 国際ニュース超入門」特集。トランプ2.0/関税大戦争/ウクライナ和平/中国・台湾有事/北朝鮮/韓国新大統領……etc.

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、ウォルツ大統領補佐官解任し国連大使に指

ワールド

米との鉱物協定「真に対等」、ウクライナ早期批准=ゼ

ワールド

インド外相「カシミール襲撃犯に裁きを」、米国務長官

ワールド

トランプ氏、ウォルツ大統領補佐官を国連大使に指名
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 5
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 6
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 7
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 8
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 9
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 10
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中