最新記事
韓国社会

BTSメンバーの入隊を「最強兵器」に使っても、韓国軍が抱える問題は変わらない

POP STARS AS WEAPONS

2023年4月5日(水)12時48分
サイラス・ジン
JINの入隊

JINの入隊前日の韓国のニュース番組 KIM JAE-HWANーSOPA IMAGESーLIGHTROCKET/GETTY IMAGES BIG HIT ENTERTAINMENTーAMA2020/GETTY IMAGES

<国民による軍隊への不信感が増すなか、時代に合わせた改革を早急に迫られている韓国軍。ポップスターで救えるのか?>

世界的に活躍するKポップの人気グループ、BTSの所属事務所は昨秋、メンバーが順次、兵役に就くと発表した。

彼らは大衆文化への貢献などを理由に入隊を30歳まで延期する「特例」が認められていたが、スーパースターの兵役をめぐり国を挙げて議論が続いていた。

韓国軍はBTSメンバーの入隊を機に、悪名高い徴兵のイメージを和らげるような広報活動を展開している。軍の改革が進んでおり、十分な報酬が支払われる技術的に熟練した兵士で構成される軍隊が、増大する国家安全保障の役割を引き受けるとアピールしたいのだ。

昨年12月、まずメンバー最年長のJINが入隊した。ファン向けのSNSに投稿した写真では、トレードマークの長い髪を軍の規定の丸刈りにして、高級デザイナーの服の代わりに標準的な軍服を着ていた。今年2月には、J-HOPEが入隊手続きに入ったと発表された。

韓国軍とBTSの関係は、ある世界的なスターのケースに似ている。アメリカのエルビス・プレスリーだ。彼もまた、軍にとって重要なタイミングで徴兵された。

米軍は当時、パブリックイメージの改善と国の将来における自分たちの役割を模索していた。1950年代後半にプレスリーと米軍が経験した変化を現代に重ねると、韓国軍の改革や、スーパースターの新兵を戦略的目標のために利用していることが見えてくる。

プレスリーはBTSと同じように、人気絶頂の58年3月に米陸軍に徴兵された。現在の韓国軍のように、当時の米陸軍も広報の問題を抱えていた。

朝鮮戦争での失態、平時の徴兵制の不評、原子爆弾時代の陸軍の役割に当時のドワイト・D・アイゼンハワー政権が懐疑的なことなどが、陸軍に大胆な改革を迫っていた。

歴史家ブライアン・リンは著書『エルビスの軍隊』で、悪評続きの米陸軍は、新たな改革された軍隊であることを前面に出そうと躍起になっていたと指摘している。

平等主義で人種的に統合された組織を経験することによって、あらゆる階層の男性が人格を形成し、貴重な職業技能を身に付けて、良い市民になることができる。

陸軍はプレスリーのようなセレブも徴兵することにより、普遍的な義務であるはずの徴兵を特権階級は擦り抜けられるのではないかという批判に対抗しようとした。

ビジネス
暮らしの安全・安心は、事件になる前に守る時代へ。...JCBと連携し、新たな防犯インフラを築く「ヴァンガードスミス」の挑戦。
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米国株式市場=急落、ダウ251ドル安 米銀大手トッ

ビジネス

NY外為市場=ドル、対ユーロで4カ月ぶり高値 米の

ワールド

米大統領、食料支援「政府再開までない」 人権団体は

ワールド

米IBM、第4四半期に人員削減 数千人規模の可能性
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 3
    「あなたが着ている制服を...」 乗客が客室乗務員に「非常識すぎる」要求...CAが取った行動が話題に
  • 4
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 5
    これをすれば「安定した子供」に育つ?...児童心理学…
  • 6
    高市首相に注がれる冷たい視線...昔ながらのタカ派で…
  • 7
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 8
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 9
    【HTV-X】7つのキーワードで知る、日本製新型宇宙ス…
  • 10
    「白人に見えない」と言われ続けた白人女性...外見と…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 6
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 9
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 10
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 7
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中