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NHK大河、視聴率1位の主人公は? データが語る日本人の歴史偏愛っぷり

地域分布に関しては、日本列島の東西(北海道・東北や中四国・九州)では明治維新以後の人物が多いのに対して、日本列島の中央部(中部・北陸・近畿)では、戦国武将など近世以前の人物が多いという対比が見られ、歴史舞台の変遷を感じさせる。

全体として、江戸時代までの武士や明治維新の志士・政治家・論客を掲げる県が多いが、文学者を挙げる県も、青森の太宰治、岩手の宮沢賢治、三重の松尾芭蕉(現在の伊賀市出身)、島根の小泉八雲、愛媛の正岡子規、宮崎の若山牧水などけっこうある。

福島の野口英世、千葉の伊能忠敬、北海道のクラーク博士など研究家・教育者の場合もある。なお、外国人は島根の小泉八雲と北海道のクラーク博士の2人。

実業家を挙げたのは埼玉の渋沢栄一のみ。また、宗教家は香川の空海のみ。めずらしいのは絶世の美女として知られる女流歌人小野小町を挙げた秋田だろう。奈良の聖徳太子、兵庫の平清盛、岡山の犬養毅などもやや異色である。

沖縄県民が挙げている尚巴志(しょうはし)王は、沖縄を初めて統一し琉球王国を樹立した人物として知られる人物であるが、沖縄以外ではややなじみが薄い。

安定的に高いNHK大河ドラマの視聴率推移

日本人の歴史好きをいやでもかき立てているのはNHKが毎年、日本史上の人物を取り上げてドラマ化している大河ドラマである。

毎年、年間を通じて放映されるNHK大河ドラマは、取り上げられた時代や人物についての歴史本や小説がベストセラーになったり、舞台となった地域自治体がそれを契機に観光振興や関連するまちづくりを積極化したりし、総じて国民の大きな関心を集めることで知られている。

図表2には、2000年以降の各番組について、世帯視聴率の推移を掲げた。

図表2 期待はずれも伴いながらも国民に広く親しまれているNHK大河ドラマ

図版=筆者作成

もっとも視聴率(期間平均視聴率)が高かったのは、江戸時代末期、薩摩藩から将軍家に嫁いだ天璋院篤姫を描いた2008年放映の「篤姫」(宮崎あおい主演)の24.5%だった。次点は、戦国武将前田利家とその妻まつを描いた2002年放映の「利家とまつ」(唐沢寿明・松嶋菜々子主演)の22.1%だった。

逆に視聴率が最低だったのは、翌年開催が予定されていた(実際はコロナのため一年延期された)東京オリンピックにあわせ、日本人初のオリンピック選手となった「日本のマラソンの父」金栗四三と東京オリンピック招致に尽力した田畑政治の2人の主人公にした2019年放映の「いだてん~東京オリムピック噺~」(中村勘九郎・阿部サダヲ主演)の8.2%だった。

初回視聴率15.4%「どうする家康」は期待を裏切れるか

戦国時代や幕末・明治維新などの純然の歴史ものは人気が高いが、現代にちかい大河は関心がいまひとつ高まらないと従来から言われていたが、それを実証するかたちとなっている。

視聴率の推移を見ると2000年代には20%前後だったのが最近は12~14%とやや低下傾向にある。ただし、最近は、ハードディスク録画が普及して録画視聴も増えている影響もある。

例えば、2017年の「おんな城主直虎」から2022年の「鎌倉殿の13人」にかけ、リアルタイム視聴率は12.8%から12.7%へと若干低下しているが、リアルタイム視聴と録画機能を使ったタイムシフト視聴のいずれかで視聴されたことを示す総合視聴率では、17.3%から20.2%へとむしろ上昇している。

総合視聴率は「おんな城主直虎」以降に発表されている値なので、図表2では従来のリアルタイム視聴率で表示しているのである。

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