最新記事
日本社会

NHK大河、視聴率1位の主人公は? データが語る日本人の歴史偏愛っぷり

2023年4月3日(月)19時10分
本川 裕(統計探偵/統計データ分析家) *PRESIDENT Onlineからの転載

徳川家康像 狩野探幽画 wikimediacommons


2023年のNHK大河ドラマは松本潤主演の『どうする家康』。統計データ分析家の本川裕さんは「歴史好きの国民に応える形で放映されている大河の関心は高い。国民のテレビ離れを抑止する最後の手段となっている」という――。


47都道府県「地元代表の歴史上の人物」は誰か?

日本人の歴史好きはよく知られている。NHK大河ドラマをはじめとする日本の歴史に題材をしたテレビドラマには多くの関心が集まり、小説の中でも時代小説、あるいは歴史小説の人気は高い。歴史小説だけでなく学術的な歴史本がベストセラーになることもめずらしくない。多くの日本人がお気に入りの歴史上の人物を心に抱いている。

2006年には財団法人日本城郭協会による「日本100名城」の選定をきっかけに「お城ブーム」が起こった。最近は女性の歴史ファンも多くなり、「歴女」なる新語も生まれている。

今回は、こうした日本人の歴史好きを反映したような統計データをいくつか取り上げ、われわれの自己認識を少しでも深めることにしよう。

ソニー生命が昨秋に行った調査で「自県を代表すると思う歴史上の人物」があり、各県で最も多かった回答結果の人物を日本地図上に示した(図表1参照)。

図表1 自県を代表すると思う歴史上の人物

図版=筆者作成

複数の都道府県で挙げられた人物をみると、「徳川家康」は栃木県、東京都、静岡県で1位となった。栃木県には家康を祀る日光東照宮があり、東京都は家康が江戸幕府を開いた江戸城(のちの皇居)のある場所、静岡県は家康が幼年期(人質時代)や晩年(大御所時代)を過ごした場所と、それぞれの地域にゆかりがある。

愛知県は尾張と三河から成っている。名古屋を含む尾張の人口ウエートが高いため、織田信長が挙げられているが、三河の方はやはり徳川家康であろう。世間一般では家康といえば静岡が有名で家康の生誕地である岡崎は全国的に知られていないと嘆く岡崎市民も多いという。

愛知県は「信長」推しだが、岡崎市は「家康愛」

2023年放映中のNHK大河ドラマ「どうする家康」にあわせて、徳川家康の生誕地、愛知県岡崎市はこの年を「家康イヤー」にしようと、ドラマを活用した各種イベントを通じ、市を挙げてPRに取り組んでいる。また、家康が生まれた岡崎城ではドラマ放送に合わせて1992年以来の大規模改装を実施している。

図表1に戻ると、家康のほか、「織田信長」は岐阜県、愛知県、滋賀県、「上杉謙信」は山形県と新潟県、「坂本龍馬」は高知県と長崎県とそれぞれ出身地および活躍地で1位となっている。大阪で挙げられた「豊臣秀吉」は、関白という役職、聚楽第や居城・伏見城の立地、御土居(おどい=京都を囲む土塁)の建造などから京都でも挙げられていてもよいはずだが京都人は秀吉の下品なところが気に入らないのか、あるいは大阪への対抗心からか、むしろ「足利義満」を選んでいる。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、ウォルツ大統領補佐官解任し国連大使に指

ビジネス

米マスターカード、1─3月期増収確保 トランプ関税

ワールド

イラン産石油購入者に「二次的制裁」、トランプ氏が警

ワールド

トランプ氏、2日に26年度予算公表=報道
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 5
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 6
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 7
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 8
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 9
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 10
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中