最新記事
映画

「おまえは俳優じゃない。ただの映画スターだ!」──「本当のニコラス・ケイジ」を探し求める、本人主演作とは?

Nicolas Cage in Search of Self

2023年3月31日(金)15時00分
デーナ・スティーブンズ(映画評論家)
ニコラス・ケイジ

ケイジ本人とそっくりな落ち目のスター、ニックはスペインで自分の大ファンである謎の大富豪と出会うが…… ©2022 LIONS GATE ENT. INC. ALL RIGHTS RESERVED.

<大物スターの「自分探し」は終わらない。ニコラス・ケイジが俳優を演じる『マッシブ・タレント』の奇抜な設定が示す、異色の才能の果てしない挑戦について>

トム・ゴーミカン監督の陽気で混沌としたコメディー映画『マッシブ・タレント』の主人公は、ニコラス・ケイジ扮する俳優のニックだ。そのニックは、デジタル処理で若返らせた自分であるニッキーと対話を繰り返す。

ある場面で、ニッキーは26歳の頃のとがっていたニックの姿で現れ、中年になった自分を叱り飛ばす。才能に見合う役を探していない、と。

「おまえは俳優じゃない。ただの映画スターだ!」。ニッキーはそう怒鳴って、未来の自分に長々と口づけする。

演じるケイジは、40年以上に及ぶ俳優人生で何度も「もう1人の自分」に遭遇してきた。スパイク・ジョーンズ監督の『アダプテーション』(2002年)やジョン・ウー監督の『フェイス/オフ』(1997年)では、風変わりな言動で知られる大物スターという自身のイメージをうまく利用した役柄を演じた。

『マッシブ・タレント』の構図は長年、本人のキャリアを突き動かしてきた力学そのものだ。ニコラス・ケイジは、ニコラス・ケイジ探しにこだわり続けている。

未来の自分に対するニッキーの懸念とは裏腹に、現実世界のケイジは21年に独立系作品『PIG/ピッグ』の演技で広く称賛されたばかり。この数年は復讐劇『マンディ 地獄のロード・ウォリアー』や、園子温監督の『プリズナーズ・オブ・ゴーストランド』など、評価の高い作品への出演が続いている。

ケイジの役選びはずっと前から、実に独特だ。脳裏に焼き付く『ワイルド・アット・ハート』のセイラーや『コン・エアー』のキャメロン・ポー、『ウィッカーマン』のハチ嫌いの主人公も、これまで演じてきた強烈な登場人物のごく一部でしかない。

実際、96年に『リービング・ラスベガス』でアカデミー主演男優賞を受賞して以来、自身の選択を誰にどう思われようと、本人はますます気にしなくなっている。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

中国、次期5カ年計画で銅・アルミナの生産能力抑制へ

ワールド

ミャンマー、総選挙第3段階は来年1月25日 国営メ

ビジネス

中国、ハードテクノロジー投資のVCファンド設立=国

ワールド

金・銀が最高値、地政学リスクや米利下げ観測で プラ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指すのは、真田広之とは「別の道」【独占インタビュー】
  • 4
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 5
    「時代劇を頼む」と言われた...岡田准一が語る、侍た…
  • 6
    「衣装がしょぼすぎ...」ノーラン監督・最新作の予告…
  • 7
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 8
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 9
    ノルウェーの海岸で金属探知機が掘り当てた、1200年…
  • 10
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 4
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 5
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 6
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 7
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 8
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 9
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 10
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 7
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 8
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中