最新記事

ドキュメンタリー

セレーナ・ゴメス、復帰への狼煙──身も心も憔悴したスターの素顔が問いかけるものとは?

A Look at Selena and Us

2022年11月30日(水)13時23分
キャット・カルデナス
セレーナ・ゴメス

人気の頂点で難病を患い、さらに心のバランスを崩したゴメスの6年を追う APPLE TVーSLATE

<「望んだものをすべて手に入れたせいで、私は死んだ」相次ぐ苦難から再起への軌跡を追った、セレーナ・ゴメスのドキュメンタリー。その生々しさが突きつけたものは...>

「約束させて。人生で最も暗い秘密を打ち明けると」

ポップスター、セレーナ・ゴメス(30)をめぐるドキュメンタリーは、彼女のこんな一言で幕を開ける。

同様の約束なら、デミ・ロバートもビリー・アイリッシュも口にした。ドキュメンタリーでありのままの生活や素顔を見せると誓ったセレブは、ほかにも大勢いる。だが、ゴメスのように約束を守るケースは珍しい。

アレック・ケシシアン監督(『イン・ベッド・ウィズ・マドンナ』)の『セレーナ・ゴメス:My Mind & Me』は、2016年から始まる。当時ゴメスはアルバム『リバイバル』を発表し、ライブツアーに乗り出そうとしていた。

満員御礼のスタジアムも黄色い声を上げるファンも、音楽ドキュメンタリーではお決まりの光景だ。だがコンサートを中心に据えるのかと思いきや、この作品はすぐに方向性を変える。

映し出されたゴメスは憔悴し、ステージ衣装から歌唱力まであらゆることに自信を失っている。

ステージで「あなたが完璧じゃないなんて誰が言った?」と歌い観衆を鼓舞するのが嘘のように、楽屋では「私と契約したのを後悔していないといいんだけど」とレコード会社の担当に弱音を吐いて、涙を拭う。

程なくして心身の不調を理由にツアーは中止に追い込まれた。神経衰弱で精神科に運ばれたゴメスは「変わり果てていた」と、当時のアシスタントは振り返る。

カメラの前にゴメスが戻るのは19年。それまでに彼女は自己免疫疾患の全身性エリテマトーデスと闘い、腎臓の移植手術を受け、鬱病に苦しみ、双極性障害と診断された。

アップルTV+で配信中の『My Mind & Me』は、最近のトレンドに乗りアーティストのもろさに焦点を当てる。

ソーシャルメディアで有名人と交流できるようになると、ファンはどんどん貪欲になった。

私生活のチラ見せではもう足りない。ネガティブな面も全て暴露しなければ満足しない。もろさをさらけ出すことでファンの心をつかんだゴメスは、この手のドキュメンタリーに適任に思える。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、鉄鋼関税50%に引き上げ表明 6月4日

ビジネス

アングル:トランプ関税、世界主要企業の負担総額34

ワールド

トランプ米大統領、日鉄とUSスチールの「パートナー

ワールド

マスク氏、政府職を離れても「トランプ氏の側近」 退
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岐路に立つアメリカ経済
特集:岐路に立つアメリカ経済
2025年6月 3日号(5/27発売)

関税で「メイド・イン・アメリカ」復活を図るトランプ。アメリカの製造業と投資、雇用はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「MiG-29戦闘機」の空爆が、ロシア国内「重要施設」を吹き飛ばす瞬間
  • 2
    「ウクライナにもっと武器を」――「正気を失った」プーチンに、米共和党幹部やMAGA派にも対ロ強硬論が台頭
  • 3
    イーロン・マスクがトランプ政権を離脱...「正直に言ってがっかりした」
  • 4
    3分ほどで死刑囚の胸が激しく上下し始め...日本人が…
  • 5
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 6
    【クイズ】生活に欠かせない「アルミニウム」...世界…
  • 7
    「これは拷問」「クマ用の回転寿司」...ローラーコー…
  • 8
    ワニにかまれた直後、警官に射殺された男性...現場と…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「ダイヤモンド」の生産量が多…
  • 10
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」…
  • 1
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「MiG-29戦闘機」の空爆が、ロシア国内「重要施設」を吹き飛ばす瞬間
  • 2
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」時代の厳しすぎる現実
  • 3
    【クイズ】世界で最も「ダイヤモンド」の生産量が多い国はどこ?
  • 4
    「ウクライナにもっと武器を」――「正気を失った」プ…
  • 5
    アメリカよりもヨーロッパ...「氷の島」グリーンラン…
  • 6
    デンゼル・ワシントンを激怒させたカメラマンの「非…
  • 7
    「ディズニーパーク内に住みたい」の夢が叶う?...「…
  • 8
    友達と疎遠になったあなたへ...見直したい「大人の友…
  • 9
    ヘビがネコに襲い掛かり「嚙みついた瞬間」を撮影...…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 3
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 4
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 5
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 6
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 7
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 8
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 9
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗…
  • 10
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中