最新記事

ドキュメンタリー

セレーナ・ゴメス、復帰への狼煙──身も心も憔悴したスターの素顔が問いかけるものとは?

A Look at Selena and Us

2022年11月30日(水)13時23分
キャット・カルデナス

作り手がどれほど誠実な姿勢で臨んでも、ドキュメンタリーは基本的に創作された物語だ。

『HOMECOMING ビヨンセ・ライブ作品』や『ジェニファー・ロペス:ハーフタイム』のようにあまり演出を加えず、コーチェラ・フェスやスーパーボウルの大舞台の裏側に迫ったものもある。

ビヨンセは出産後の生活とキャリアをたどる13年の『ライフ・イズ・バット・ア・ドリーム』で監督・製作・ナレーションを手掛け、自分の見せ方をしっかり管理した。

一方ネットフリックスの『jeen-yuhs: カニエ・ウェスト3部作』のように、率直なアプローチがアーティストの怒りを買うケースもある。

日記を読むゴメスを美しいモノクロ映像で映すなど、『My Mind & Me』にも演出は見られる。だが時に痛ましささえ感じるほど、全体として生々しい仕上がりだ。

ゴメスが名声との葛藤を語るのを聞けば、胸がつぶれそうになる。その姿はどうしても、名声の絶頂で悲劇的な死を遂げた同じテキサス出身の歌手セレーナと重なる。2人とも芸能活動に子供時代をささげ、アイデンティティーとイメージの齟齬や自分を見せ物にする代償の重さに悩んだ。

夢は全部かなえたけれど

ゴメスは7歳から子役として活動し、ディズニー・チャンネルのドラマでブレイクした。大人になったのはSNS全盛期で、世間の詮索はエスカレートする一方だった。

「望んだものは全て手に入れ、夢も全部実現させた。でもそのせいで私は死んだ。常にセレーナ・ゴメスでいなければならなかったから」と、彼女は日記につづる。

明るい場面がないわけではない。チャリティー活動で学校の設立に協力したケニアや故郷テキサスにいるときのゴメスは、生き生きと輝いている。ファンもパパラッチもいない場所で少女に戻り、一方で大人の女性らしい満ち足りた表情を見せる。

「故郷に帰ると、必ず思い出の場所を訪ねる。自分のそうした部分を失いたくないから」と、ゴメスは語る。

カメラは本格的なカムバックに挑んだ20年のゴメスを追いながら、名声のすさまじい重圧をあぶり出す。

3枚目のアルバム『レア』の宣伝活動を控え、ゴメスはホテルの一室にいる。時差ぼけでうとうとしている彼女にスタッフが群がり、髪や爪を整える。これからゴメスは数日間、マスコミの取材をまとめて受けるのだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米経済活動、7地区で緩やかな拡大 見通しは全体に楽

ワールド

トランプ氏、対イラン作戦で米軍優勢 紛争後の米の役

ビジネス

米国株式市場=反発、イラン巡る外交に期待 ハイテク

ビジネス

NY外為市場=ドル反落、中東懸念後退でリスク選好回
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプのイラン攻撃
特集:トランプのイラン攻撃
2026年3月10日号(3/ 3発売)

核開発の断念を迫るトランプ政権が攻撃を開始。イランとアメリカの本格戦争は始まるのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    イラン猛反撃、同士討ちまで起きる防空戦はいつまで続くのか
  • 2
    サファリ中の女性に悲劇...ライオンに「くわえ去られる」衝撃映像にネット騒然
  • 3
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビザの壁、会社都合の解雇、帰国後も続く苦境
  • 4
    縫いぐるみが相棒、孤独なサル「パンチくん」がバズ…
  • 5
    「外国人が増え、犯罪は減った」という現実もあるの…
  • 6
    「イランはどこ?」2000人のアメリカ人が指差した場…
  • 7
    少子化に悩む韓国で出生率回復...昨年過去最大の伸び…
  • 8
    「死体を運んでる...」Google Earthで表示される「不…
  • 9
    戦術は進化しても戦局が動かない地獄──ロシア・ウク…
  • 10
    核合意寸前、米国がイラン攻撃に踏み切った理由
  • 1
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからくりとリスク
  • 2
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビザの壁、会社都合の解雇、帰国後も続く苦境
  • 3
    BTS復活...でも、韓国エンタメが「苦境」に陥っている
  • 4
    縫いぐるみが相棒、孤独なサル「パンチくん」がバズ…
  • 5
    中国、4隻目の空母は原子力艦か──世界3番目の原子力…
  • 6
    村瀬心椛は「トップでなければおかしい」...スノボの…
  • 7
    「毎日が人生最後の日」だと思って酒を飲む...84歳医…
  • 8
    少女買春に加え、国家機密の横流しまで...アンドルー…
  • 9
    イラン猛反撃、同士討ちまで起きる防空戦はいつまで…
  • 10
    サファリ中の女性に悲劇...ライオンに「くわえ去られ…
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 3
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 4
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 5
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 6
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 7
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 8
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中