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イチローの英語が流暢なら、あの感動的なスピーチは生まれなかったかもしれない

2022年10月21日(金)17時04分
岡田光世

イチロー氏の生きる姿勢、人には真似できない努力の裏付けがあるからこそ、彼の言葉は、心に響く。重みと深み、訴える力がある。

日本人だけでなく、シアトルじゅうの人たちが勇気と希望を受け止めた。できないと限界を設けてしまうのは、いつも “自分” であることに、気づかされた。

“I would like to say to the current players your future has possibilities that you cannot imagine as well, so embrace it by giving your best without imposing limits on yourself. If a skinny, undersized guy from Japan can compete in this uniform, and then stand before you tonight to accept this honor, then there’s no reason you cannot do it either.”
(現役の選手たちに言いたい。君たちの未来にも、君たちが想像できない可能性がある。だから、それを心に抱き、自分自身に限界を設けることなく、ベストを尽くしてほしい。日本から来たやせっぽっちの小柄な男が、このユニホームを着て競うことができるなら、今夜、皆さんの前に立ってこの名誉を受けることができるのなら、君たちにできないはずがない。)

大切なのは、言葉そのものではない。それが心を通した言葉になっているかどうかだ。そして、スピーチは言葉だけではない。背筋を伸ばし、堂々とした立ち居振る舞い。アイコンタクトや表情。話す強弱や間の取り方。

つねに聞き手を意識し、反応を確認しながら、話を進めていく。そこには聞き手との「対話」がある。スピーチのなかで誰かについて語る時にも、わざわざ後ろを振り返り、その人と目を合わせていた。

選手も観衆も、聞き入った。会場は何度も、大歓声と笑いに沸いた。「イチロー」コールが鳴り響いた。スピーチの最後まで観衆を惹きつけ続けるのは、並大抵の力ではない。

そういう意味でも、今回のイチロー氏のスピーチは、少なくとも日本人による英語の名演説として、歴史に残るはずだ。

最後にひと言、添えておきたい。イチロー氏のスピーチは、中学生でも知っている単語が散りばめられていた、ということを。

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