最新記事

映画

エネルギーと魅力に溢れた2人をずっと見ていたくなる青春映画『リコリス・ピザ』

The Immaculate Vibes

2022年7月1日(金)17時52分
デーナ・スティーブンズ(映画評論家)
『リコリス・ピザ』

ゲーリー(左)とアラナは、ぶつかりながらもエネルギッシュに前へ前へと進み続ける ©2021 METRO-GOLDWYN-MAYER PICTURES INC. ALL RIGHTS RESERVED.

<P・T・アンダーソン監督の新作映画『リコリス・ピザ』は、大物俳優も脇役としてこぞってサポートする>

ポール・トーマス・アンダーソン監督の新作『リコリス・ピザ』は、1970年代のハリウッドが舞台の青春映画だ。ただし映画業界の内幕を描くのではない。映画製作スタジオが集まるサンフェルナンドバレー地区に住む高校生の、はちゃめちゃながらも愛すべき成長物語だ。

映画の舞台と同じエリアで映画関係者に囲まれて育ったアンダーソン(51)にとって、本作はこれまでで最も自伝に近い作品のように感じられる。ただし実際に物語のベースとなったのは、子役スター転じて現在は映画プロデューサーとして活躍するゲーリー・ゴーツマン(69)の生い立ちについて、アンダーソンが直接聞いた話だ。

主人公ゲーリー・バレンタインは、サンフェルナンドバレーの高校に通う15歳。アンダーソンはこのキャラクターに特別な愛着を感じているようで、数多くのアンダーソン作品に出演した故フィリップ・シーモア・ホフマンの息子、クーパー・ホフマン(19)をこの役に起用した。

ゲーリーが恋に落ちるのは、10歳も年上のアラナ・ケイン。演じるのは、人気抜群の3人姉妹ポップロックバンド「ハイム」の末っ子であるアラナ・ハイムだ。アラナはゲーリーの通う高校の証明写真撮影日に、カメラマンのアシスタントとしてやって来る。

頭の回転が速くて皮肉屋で、ちょっぴり高飛車だけれど自分が何になりたいか分からなくて、どこか弱さを秘めたアラナは最高に魅力的なキャラクターだ。ミニスカートにウェッジサンダル姿で登場するアラナに、ゲーリー(と観客)は一目ぼれする。

大スターが続々と出演

さっそくアラナにアプローチするゲーリーだが、年上の彼女は笑って相手にしない。だが食事を一緒にすると、2人はすぐに友達兼ビジネスパートナーの関係になる。

ゲーリーが端役で出演した映画のプロモーションのためにニューヨークを訪問することになったときは、シングルマザーで多忙なゲーリーの母親に代わって、アラナがゲーリーの保護者として同行することになる。

これを機にアラナは女優を目指すことを考えるようになる。ゲーリーは少ないツテを駆使して懸命にサポートしようとするが、うまくいかない。その一方で、彼は当時大流行したウオーターベッドの販売事業を立ち上げ、意外にも好調なスタートを切る。

この映画の中盤では、大スターが続々と登場して、実在した大スターとおぼしきキャラクターを喜々として演じる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ユーロ圏GDP、異常気象で5%減の可能性 ECB幹

ワールド

中国、雇用下支えへ支援策 米との貿易摩擦長期化で対

ビジネス

米ドル、第1・四半期の世界準備通貨の構成比が低下 

ワールド

スコットランド警察、トランプ米大統領訪問に向け事前
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:大森元貴「言葉の力」
特集:大森元貴「言葉の力」
2025年7月15日号(7/ 8発売)

時代を映すアーティスト・大森元貴の「言葉の力」の源泉にロングインタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 2
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...APB「乗っ取り」騒動、日本に欠けていたものは?
  • 3
    トランプ関税と財政の無茶ぶりに投資家もうんざり、「強いドルは終わった」
  • 4
    名古屋が中国からのフェンタニル密輸の中継拠点に?…
  • 5
    人種から体型、言語まで...実は『ハリー・ポッター』…
  • 6
    「詐欺だ」「環境への配慮に欠ける」メーガン妃ブラ…
  • 7
    犯罪者に狙われる家の「共通点」とは? 広域強盗事…
  • 8
    【クイズ】 現存する「世界最古の教育機関」はどれ?
  • 9
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 10
    「ヒラリーに似すぎ」なトランプ像...ディズニー・ワ…
  • 1
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 2
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコに1400万人が注目
  • 3
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸せ映像に「それどころじゃない光景」が映り込んでしまう
  • 4
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、…
  • 5
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...AP…
  • 6
    【クイズ】「宗教を捨てる人」が最も多い宗教はどれ?
  • 7
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 8
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 9
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 10
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 5
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 6
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 7
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 8
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 9
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 10
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中