最新記事

映画

映画『テンダー・バー』に反映される、バーで成長したクルーニー監督の思い出

Clooney's Own Bar Life

2022年2月9日(水)17時37分
ジェイミー・バートン
『僕を育ててくれたテンダー・バー』

クルーニーの友人アフレック(左)がJR(右)の叔父役を好演 Ⓒ2021 AMAZON CONTENT SERVICES LLC

<少年時代をバーで「大人と一緒に」過ごしていたジョージ・クルーニー監督が、自身の経験を重ねて映画化した『僕を育ててくれたテンダー・バー』>

父と疎遠な少年が、母方の叔父が営むバーに出入りし、大人の振る舞いを親身な叔父から教わって成長し、小説家を目指していく──。

『僕を育ててくれたテンダー・バー』(アマゾンプライム・ビデオで配信中)は、ジャーナリストであるJ・R・モーリンガーの自伝を下敷きにした映画だが、監督であるジョージ・クルーニー自身の少年時代のバーでの経験も重ねられている。

クルーニーは今、イギリス南部オックスフォードシャー州で暮らしている。16世紀から続くパブ「ブル・イン」がお気に入りだが、そこは彼が少年時代を過ごしたアメリカのバーとは大違いだ。

「『ブル』は風情がある。多感な少年時代に私が大人の世界を感じたバーは、ケンタッキー州の町にあって、母はそこを『血だまり』と呼んでいた」とクルーニーは本誌に語った。銃声が聞こえることも珍しくない場所だったという。『テンダー・バー』は、母子家庭で育つ少年JR(ダニエル・ラニエリ)が叔父チャーリー(ベン・アフレック)の「ディケンズ・バー」に入り浸る日々を通じて理想の父親像を探す物語だ。

大人と触れ合える世界

「JRと同じ12歳くらいのころ、『血だまり』バーの上階に住むジョージおじさんと一緒に競馬場で働いていた」とクルーニーは言う。「おじさんのタバコを買いにバーへ行き、そこで個性的な人たちに出会った。楽しかった」

一方で、少年時代をバーで過ごすという自身の経験が普通ではないことも承知している。「成長過程の子供がバーで過ごすのを奨励する気はないが、大人と触れ合える貴重な時間だったとは思う」

クルーニーは後に、演劇クラスで長年の制作パートナーになるグラント・ヘスロフと出会う。2人は映画制作会社スモークハウス・ピクチャーズを設立し、名作『アルゴ』を送り出した(今度の『テンダー・バー』も同社の作品)。「僕は頭脳で、彼はルックス。完璧なコンビだよ」と言ってヘスロフは笑った。「出会ったのは僕が19で、彼が21のとき。それで、いつも言っていた。『楽しめなくなったら、すぐにやめようぜ』って」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ロシア西部2州で橋崩落、列車脱線し7人死亡 ウクラ

ビジネス

インフレ鈍化「救い」、先行きリスクも PCE巡りS

ワールド

韓国輸出、5月は前年比-1.3% 米中向けが大幅に

ワールド

米の鉄鋼関税引き上げ、EUが批判 「報復の用意」
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岐路に立つアメリカ経済
特集:岐路に立つアメリカ経済
2025年6月 3日号(5/27発売)

関税で「メイド・イン・アメリカ」復活を図るトランプ。アメリカの製造業と投資、雇用はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシストの特徴...その見分け方とは?
  • 2
    3分ほどで死刑囚の胸が激しく上下し始め...日本人が知らないアメリカの死刑、リアルな一部始終
  • 3
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「MiG-29戦闘機」の空爆が、ロシア国内「重要施設」を吹き飛ばす瞬間
  • 4
    「ホットヨガ」は本当に健康的なのか?...医師らが語…
  • 5
    ペットの居場所に服を置いたら「黄色い点々」がびっ…
  • 6
    【クイズ】生活に欠かせない「アルミニウム」...世界…
  • 7
    メーガン妃は「お辞儀」したのか?...シャーロット王…
  • 8
    「これは拷問」「クマ用の回転寿司」...ローラーコー…
  • 9
    「ウクライナにもっと武器を」――「正気を失った」プ…
  • 10
    イーロン・マスクがトランプ政権を離脱...「正直に言…
  • 1
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「MiG-29戦闘機」の空爆が、ロシア国内「重要施設」を吹き飛ばす瞬間
  • 2
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシストの特徴...その見分け方とは?
  • 3
    3分ほどで死刑囚の胸が激しく上下し始め...日本人が知らないアメリカの死刑、リアルな一部始終
  • 4
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」…
  • 5
    【クイズ】世界で最も「ダイヤモンド」の生産量が多…
  • 6
    「ウクライナにもっと武器を」――「正気を失った」プ…
  • 7
    「ディズニーパーク内に住みたい」の夢が叶う?...「…
  • 8
    ヘビがネコに襲い掛かり「嚙みついた瞬間」を撮影...…
  • 9
    【クイズ】世界で2番目に「金の産出量」が多い国は?
  • 10
    イーロン・マスクがトランプ政権を離脱...「正直に言…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 3
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 4
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 5
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 6
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 7
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 8
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 9
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 10
    3分ほどで死刑囚の胸が激しく上下し始め...日本人が…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中