最新記事

ヘルス

尿酸値14.8でも痛風にならない「プレミアムな患者」が医師から頼まれたこととは──

2021年10月3日(日)13時30分
樋口真嗣(映画監督) *PRESIDENT Onlineからの転載
ワインを飲む樋口真嗣監督

旅先で飲むお酒も大好き。移動中の電車でカップワインをキューっと飲む樋口監督。


映画監督の樋口真嗣さんは「酒が飲みたくて映画の仕事をしている」というほどのお酒好きだ。5年前、人間ドックで「尿酸値14.8mg/dL」という数値が出ると、医師から「これにサインをしてくれませんか」と切り出された。樋口さんがサインをした内容とは――。

※本稿は、キンマサタカと全日本痛風連盟編『痛風の朝』(本の雑誌社)の一部を再編集したものです。

尿酸値は高いけど痛風にならない特異体質

実はですね、私は厳密にいうと痛風じゃないんです。尿酸値が高いのは間違いないけど、痛風=発作が出たことだと定義するなら、私はそれにあてはまらない。

自分の尿酸値の高さにはじめて気づいたのは5年前です。

人生で初めての人間ドックに行ったんですが、終わった後の問診をしていたら、私のカルテを見た問診の先生が興奮しているのがわかったんですね。

すると内線でどこかに電話をかけた。すぐに違う医師がやってきて、自分には見えないようにカルテを挟んで、ごにょごにょ言っているわけです。

二人はこちらを見て「これにサインをしてくれませんか」と言う。なにこれと思いますよね。そうすると「いや大丈夫」「いいことだらけなんで」と僕を説得しようとしている。明らかにおかしいじゃないですか。

「高尿酸値の不健康な人間」を探していた医者

聞けば、あとから部屋に入ってきたのは日本で3本の指にはいる循環器科の先生で、「尿酸値を下げる」というテーマで論文を書いているんだとか。臨床データをとるために高尿酸値の患者を探しているのかもしれないと私は思いました。

一般的に尿酸値があがると痛風の発作が出て、薬を飲むので数値が下がってしまいます。だから高い数値をキープしている人って少ないらしいんです。

研究者たちは高い尿酸値の実験台を手に入れたい。高ければ高いほど、数値の変化がわかりやすいんでしょうね。

ちなみに、その時の私の尿酸値は14.8(mg/dL)でした。一般的に7を上回ると痛風の危険があると言われているんですが、私は全く痛風の発作が出てない。

先生は尿酸値が高い人を常に探していて、院内に「高尿酸値の不健康な人間を見つけたらご一報ください」と網をはっていたのかも。察するにそこに私がひっかかったのではないかと。

とびきりの高い数値で、生活も不規則で、改善の気配もない。仮説を立証するには申し分ない。

想像だけが膨らんで最初は不安でしたよ。そもそも自分がそんな体質だったことも知らなかったし、なにより不便もありませんでしたから。でも、痛風の危険性をとうとうと説かれ続けると、だんだん不安になるわけで、定期的に検査もしてもらえるということで、まあいいかなと。それから処方された薬を飲むことになりました。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

決算に厳しい目、FOMCは無風か=今週の米株式市場

ビジネス

中国工業部門企業利益、1─3月は4.3%増に鈍化 

ビジネス

米地銀リパブリック・ファーストが公的管理下に、同業

ワールド

米石油・ガス掘削リグ稼働数、22年2月以来の低水準
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ」「ゲーム」「へのへのもへじ」

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 6

    走行中なのに運転手を殴打、バスは建物に衝突...衝撃…

  • 7

    ロシア黒海艦隊「最古の艦艇」がウクライナ軍による…

  • 8

    ロシア軍「Mi8ヘリコプター」にウクライナ軍HIMARSが…

  • 9

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 10

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 6

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 7

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 8

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈する動画...「吹き飛ばされた」と遺族(ロシア報道)

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中