最新記事

韓国映画

カン・ハンナ「私のおすすめ韓国映画5本」とマブリー愛、韓国映画が面白い理由

2021年5月5日(水)12時20分
カン・ハンナ(歌人・タレント・国際文化研究者)
カン・ハンナ

<面白い韓国映画には理由と「仕組み」がある――そう語る、ソウル出身で歌人・タレント・国際文化研究者のカン・ハンナ。おすすめの韓国映画について尋ねると、韓国ブロックバスター作品の「共通点」、いま会いたい1人のスターも教えてくれた>

1.『八月のクリスマス』(1998年)
2.『殺人の追憶』(2003年)
3.『タクシー運転手 約束は海を越えて』(2017年)
4.『犯罪都市』(2017年)
5.『完璧な他人』(2018年)

韓国映画はヒットする「仕組み」を知ると面白い。でもその前にまず、私が一番好きな映画を紹介したい。『八月のクリスマス』(1998年)という作品だ。20年以上前の映画だが、今でも韓国人みんなから愛されている。

それまで韓国映画のラブストーリーと言えば、号泣するシーンが多かった。でもこれは真逆で、静かな愛の物語。登場人物は最後の最後まで泣かない。

病で余命わずかな男性が営む写真館に、若い女性がやって来て、そこから恋が始まる。物語は静かに進んでいって、あれ終わっちゃった、と思わされるけれど、心に余韻が残る。

magSR20210505kanghannah-2.jpg

『八月のクリスマス』 EVERETT COLLECTION/AFLO

主演のシム・ウナは当時トップ女優だったが、その後引退してしまった。彼女の演技力や透明感がこの映画にとても合っていた。復帰してまたラブストーリーをやってほしいと今でもファンが待っている、素晴らしい女優。

同じ頃、韓国で岩井俊二監督の『Love Letter』がヒットし、国民的な人気を得た。これもゆっくりと始まるラブストーリーで、韓国人と日本人の感受性は意外と同じなのかなと思う。だからこの映画にも日本の人たちが好きな要素があるはず。

2003年、『殺人の追憶』が公開された。この映画をオススメする理由は、『パラサイト 半地下の家族』のポン・ジュノ監督の作品の中で、私が最も衝撃を受けた映画だから。

これは私が子供の頃、80年代後半から90年代に実際にあった殺人事件を基にしている。華城(ファソン)という、私が住むソウルから車で40分しか離れていない村で起こった事件だったし、女性を狙った連続殺人だったので、とても怖かったのを覚えている。しかも犯人は捕まっていなかった。

magSR20210505kanghannah-3.jpg

『殺人の追憶』 PHOTOFEST/AFLO

それまでの韓国映画にないチャレンジが2つあった。1つは、実話を基にしていたこと。リアリティーを追求するため、徹底した調査が行われた。2019年になって事件の犯人が判明したが、映画で描かれた犯人とそっくりで、まるで予測していたようだと韓国で再びブームになったぐらいだ。

もう1つは、ポン・ジュノ映画の特徴だが、ちょっと笑いを取り入れていること。深刻なスリラー作品なのに、笑いがある。

『パラサイト』も同様で、ブラックコメディーであることが世界で評価された理由の1つだったと思う。『殺人の追憶』を初めて観たとき、このテーマで笑わせるんだ、と衝撃を受けた。当時の韓国映画は、暗い作品かコメディーか、どちらかだったから。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

米8月の求人件数は小幅増、採用減が労働市場の減速を

ワールド

トランプ氏「おそらく政府閉鎖になる」、民主党に「不

ビジネス

米CB消費者信頼感、9月は予想下回る 雇用機会巡る

ワールド

米国防長官、緊急会議で軍幹部の肥満など批判 トラン
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:2025年の大谷翔平 二刀流の奇跡
特集:2025年の大谷翔平 二刀流の奇跡
2025年10月 7日号(9/30発売)

投手復帰のシーズンもプレーオフに進出。二刀流の復活劇をアメリカはどう見たか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外な国だった!
  • 2
    ウクライナにドローンを送り込むのはロシアだけではない...領空侵犯した意外な国とその目的は?
  • 3
    【クイズ】身長272cm...人類史上、最も身長の高かった男性は「どこの国」出身?
  • 4
    10代女子を襲う「トンデモ性知識」の波...15歳を装っ…
  • 5
    コーチとグッチで明暗 Z世代が変える高級ブランド市…
  • 6
    カーク暗殺の直後から「極左」批判...トランプ政権が…
  • 7
    通勤費が高すぎて...「棺桶のような場所」で寝泊まり…
  • 8
    こんな場面は子連れ客に気をつかうべき! 母親が「怒…
  • 9
    博物館や美術館をうまく楽しめない人は...国立民族学…
  • 10
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 1
    トイレの外に「覗き魔」がいる...娘の訴えに家を飛び出した父親が見つけた「犯人の正体」にSNS爆笑
  • 2
    日本の小説が世界で爆売れし、英米の文学賞を席巻...「文学界の異変」が起きた本当の理由
  • 3
    こんな場面は子連れ客に気をつかうべき! 母親が「怒りの動画」投稿も...「わがまま」と批判の声
  • 4
    iPhone 17は「すぐ傷つく」...世界中で相次ぐ苦情、A…
  • 5
    【クイズ】世界で1番「がん」になる人の割合が高い国…
  • 6
    ウクライナにドローンを送り込むのはロシアだけでは…
  • 7
    コーチとグッチで明暗 Z世代が変える高級ブランド市…
  • 8
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ…
  • 9
    高校アメフトの試合中に「あまりに悪質なプレー」...…
  • 10
    虫刺されに見える? 足首の「謎の灰色の傷」の中から…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 4
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 5
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に.…
  • 6
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 7
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 8
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
  • 9
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 10
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中