最新記事

ネット

韓国もフランスも続々と キッズ・ユーチューバーへの規制始まる

2020年11月3日(火)09時10分
ウォリックあずみ(映画配給コーディネイター)

世界で一番稼ぐユーチューバー、ライアン・カジ君 Ryan's World / YouTube

<かつてテレビ業界では「子どもと動物を出せば視聴率が取れる」と言われたが、同じことがユーチューブでも起きている?>

日本のユーチューブ・チャンネル登録者数ランキングでは、ベスト3位のうち2つが子供向けチャンネルだ(2020年10月末時点)。1位の「キッズライン♡Kids Line」の登録者数は1210万人を超え、再生回数も98億5500万回以上という驚異的な数字だ。

一体何を配信しているチャンネルなのかというと、小学生くらいの子供2人がおもちゃやお菓子のレビューなどをしている。このように、今ユーチューブ界では子供が活躍するチャンネルが人気を集め、急増している。

ユーチューブは始まった当初のように趣味で配信する人ばかりでなく、ユーチューバーはすでに職業の一つとして認識されるようになってきた。そうすると、"プロ"ユーチューバーの子供達もお金を稼ぐ子役と同等であり、最近では子役に労働基準があるように、キッズユーチューバーの撮影に規制を設ける国も増えてきた。

わずか9歳で年収24億円のキッズユーチューバー

世界で一番稼いでいるユーチューバーとして有名なアメリカのライアン君9歳は、年収24億円と言われている。日本でも稼ぐ子役の陰に、両親との金銭トラブルはよくある話だが、アメリカの場合「クーガン法」と呼ばれる、収益を子役本人のために残しておく法律が存在する。

これは、チャップリンの映画『キッド』(1921年)で一躍有名子役になったジャッキー・クーガンに由来するものだ。ジャッキーの稼いだ出演料は全て両親が浪費してしまい、ジャッキーが成人になった頃には1ドルも残されていなかったという。

この事件から1939年よりクーガン法が制定され、子役の報酬の15%は「クーガン・アカウント」と呼ばれる銀行口座に、本人が成人になるまで直接貯蓄され保護される仕組みになっている。それが今はキッズユーチューバーにも適用されているわけだ。

仏、16歳未満のチャンネル登録は届け出必要に

ヨーロッパでもキッズユーチューブチャンネルは人気だが、なかでもいち早く規制制定に乗り出した国がフランスである。アメリカのクーガン法同様に子供の財産を守る法律はもちろん、16歳未満のキッズユーチューバーがチャンネルを開設する場合は、両親がフランス当局に許可を取らなくてはならない。

また、テレビや映画の子役に課すように、ユーチューバーにも撮影時間の規定を設けている。フランスでは、ソーシャルネットワークの一環であるというユーチューブの認識が、お金が発生=仕事であるという風に、いち早く変わっているようだ。

お隣の国・韓国でも今年の6月に、政府から未成年ユーチューバーへの動画制作指針が発表された。韓国でも子供を出演させるキッズチャンネルは多く、最近では10キロを超えるタコを双子の娘に丸かじりさせる動画や、ミニスカートを履かせアイドルのセクシーダンスを踊らせる動画など、再生回数を稼ぐために映像制作が過激になっているのではないかと指摘される事例が増え、問題視されていた。

そこで、韓国政府放送通信委員会は、ユーチューブを含むインターネット個人放送に出演する未成年者保護のガイドラインを発表した。これは、法律およびインターネット政策専門家、ユーチューブやアフリカTV、ダイヤTVなどのMCN(マルチチャンネルネットワーク)事業者、プラットホーム事業者などの意見を取り入れ制作されたものだという。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

再送-インタビュー:ラピダス半導体にIOWN活用も

ビジネス

中国、国有メーカー2車種を初の自動運転レベル3認定

ワールド

インド貿易赤字、11月は縮小 政府高官「米との枠組

ビジネス

日本生命、医療データ分析のMDVにTOB 完全子会
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の展望。本当にトンネルは抜けたのか?
  • 2
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジアの宝石」の終焉
  • 3
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 4
    極限の筋力をつくる2つの技術とは?...真の力は「前…
  • 5
    南京事件を描いた映画「南京写真館」を皮肉るスラン…
  • 6
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 7
    トランプが日中の「喧嘩」に口を挟まないもっともな…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    大成功の東京デフリンピックが、日本人をこう変えた
  • 10
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 3
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 4
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 7
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 8
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 9
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキ…
  • 10
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中