最新記事

映画

「生きさせろ!」 コロナショックで苦境に陥る映画館、生き残りかけ模索

2020年4月5日(日)21時15分
ウォリックあずみ(映画配給コーディネイター)

全米でシネコンチェーンはすべて閉館するなど、映画業界はコロナショックで危機的状況に陥っている。写真は3月17日NYのタイムズスクエアにあるリーガルシネマ。 Carlo Allegri - REUTERS

<不要不急の外出自粛が求められるなか、各国の映画関係者は必死の闘いをしている>

いまだ収束のめどがつかず、世界中で猛威を振るっている新型コロナウイルス。感染予防として「STAY HOME」が呼びかけられ、世界人口の約半分に当たる39億人を超える人々が自宅待機を求められている状態だ。それに伴いさまざまな業種に大きな影響が出ているが、特にエンターテイメント業界は深刻さを増している。

お隣りの国、韓国は今年2月に映画『パラサイト 半地下の家族』が米アカデミー賞4冠に輝き、世界各国で韓国映画の観客動員記録を打ち立てるなど、今年は韓国映画旋風が巻き起こると期待したのもつかの間、新型コロナウイルスの感染拡大でそれどころではなくなってしまった。

韓国国内でも映画館へ出向く観客が激減し、3月の集客結果は映画振興委員会が2004年に全国チケット集計を始めて以来、史上最低の集客結果となった。

業界団体が結束、政府の経済対策に映画業界支援を盛り込ませる

コロナ感染者が増えだした1月頃から急激に集客数が減りだし、政府は映画館業界に「ハンドサニタイザー5000本の支給、映画振興基金徴収の一時的猶予、劇場防疫イベントの支援」などの対策を実行していた。

しかしこれだけでは足りないと韓国上映館協会をはじめ、韓国撮影監督協会、プロデューサー協会、映画制作家協会など各種映画関連団体が共同で、「政府の金融支援政策を今すぐ施行すること」などを含む要望書を政府の文化体育観光部と映画振興委員会へ3月25日に提出した。

そのかいあってか、4月1日政府が発表した「新型コロナウイルス関連業種別支援法案III」には「映画発展基金徴収の一時的減免(今年いっぱい免除)、撮影・製作中断された国内映画20作に対する製作支援金支援、短期失業状態に置かれた映画スタッフ400人を対象に職業訓練支援、映画観覧割引券と広報キャンペーンの支援」など具体的な案が加えられている。

各社のシネコンチェーンでは客席を1席飛ばしでチケット販売し、間隔をあけるように客を配置するなどの独自で工夫しながら営業中だが、いくつかのミニシアターは経営難で休館せざる負えなくなってしまった。

また、映画館が営業をしていても新作の封切日延期が続き、公開する映画がなくなるというトラブルも発生。そのため、これまで人気のあった作品の再上映や未公開だった作品を公開する映画館が急増している。韓国国内での今年1〜3月期の再上映作品はなんと130作にも上った。これは昨年の67作品の倍にあたる作品数だ。

また、外国映画の買い付けをする会社が作る「映画輸入配給会社協会」では、有志14社が一緒に協力し、毎週3、4本の未公開作品をシネコンで上映する企画展上映を行っている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ファイザーと薬価引き下げで合意、関税減免と引き換え

ビジネス

米政府閉鎖の経済への影響、期間と規模次第=シカゴ連

ビジネス

米国株式市場=3指数が続伸、月間・四半期でも上昇 

ビジネス

NY外為市場=ドル下落、雇用統計の発表遅延を警戒
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:2025年の大谷翔平 二刀流の奇跡
特集:2025年の大谷翔平 二刀流の奇跡
2025年10月 7日号(9/30発売)

投手復帰のシーズンもプレーオフに進出。二刀流の復活劇をアメリカはどう見たか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外な国だった!
  • 2
    ウクライナにドローンを送り込むのはロシアだけではない...領空侵犯した意外な国とその目的は?
  • 3
    【クイズ】身長272cm...人類史上、最も身長の高かった男性は「どこの国」出身?
  • 4
    10代女子を襲う「トンデモ性知識」の波...15歳を装っ…
  • 5
    コーチとグッチで明暗 Z世代が変える高級ブランド市…
  • 6
    通勤費が高すぎて...「棺桶のような場所」で寝泊まり…
  • 7
    カーク暗殺の直後から「極左」批判...トランプ政権が…
  • 8
    こんな場面は子連れ客に気をつかうべき! 母親が「怒…
  • 9
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 10
    博物館や美術館をうまく楽しめない人は...国立民族学…
  • 1
    トイレの外に「覗き魔」がいる...娘の訴えに家を飛び出した父親が見つけた「犯人の正体」にSNS爆笑
  • 2
    日本の小説が世界で爆売れし、英米の文学賞を席巻...「文学界の異変」が起きた本当の理由
  • 3
    こんな場面は子連れ客に気をつかうべき! 母親が「怒りの動画」投稿も...「わがまま」と批判の声
  • 4
    iPhone 17は「すぐ傷つく」...世界中で相次ぐ苦情、A…
  • 5
    【クイズ】世界で1番「がん」になる人の割合が高い国…
  • 6
    ウクライナにドローンを送り込むのはロシアだけでは…
  • 7
    コーチとグッチで明暗 Z世代が変える高級ブランド市…
  • 8
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ…
  • 9
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 10
    高校アメフトの試合中に「あまりに悪質なプレー」...…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 4
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 5
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に.…
  • 6
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 7
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 8
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
  • 9
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 10
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中