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2019年韓国映画界1000万超ヒットが5本も 撮影所から幽霊・水漏れまでヒットを呼ぶ要素

2019年12月22日(日)14時00分
ウォリックあずみ(映画配給コーディネーター)

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ポン・ジュノ監督の2013年の作品『スノーピアサー』は韓米仏合作ということで、「告祀」にはiPadで豚が並べられていた。 14F 일사에프 / YouTube

幽霊を見て喜び、水漏れも歓迎?

韓国の映画業界にトータル10年以上4企業で勤務してきた筆者からみると、韓国のエンタメ業界の人々はジンクスを信じやすい。映画は公開するとコケる作品も多いが、1本のヒットで数本分の赤字全てを巻き返すことができるため「ギャンブル」とも言われている。ヒットした作品があると、それに少しでもあやかりたい気持ちから、ジンクスが誕生するのだろう。

これまで見聞きしたジンクスで一番有名なのは「撮影場所に幽霊が出るとその映画はヒットする」というもの。初めて聞いたのは、当時関わっていた映画のセットである韓国伝統家屋で助監督が幽霊を見たときだった。

その日の撮影が終了し、遅くなったためセットで寝ていた助監督が、屋根の上からこっちを見ている女性の幽霊を見たと騒いでいた。ところが、ベテランスタッフたちは怖がるどころか「ヒットするぞ!」と喜んでいたのを覚えている。筆者が通っていたソウル芸術大学でも、学校内で幽霊を見ることができたら、その子は卒業後に売れるという噂もあった。

また、日本でも使う慣用句「火の車」から、水のトラブルは火を消すイメージがあるためか映画関係者から歓迎されるようだ。映画会社の企画室に勤めていた頃、制作室の天井裏のパイプが故障し、上から水が滝のように流れてきたことがあった。

水浸しになってパソコンや電話機が壊れたのに、同僚たちはそれを嘆くより、ヒットが出ると喜んでいた。ちなみにその会社の事務所は、以前サムスンの事務所が入っていたという。引越の際に、運にあやかる意味を込めてその場所に決めたそうだ。

占いにお祈り、げんを担ぐのが大好きな韓国映画界

日本人も占いや願掛けが好きな民族と思うが、韓国人はそれに輪をかけて信じる人が多いように思える。街を歩いているといたるところで占い屋を見かけることができる。その種類は恋愛運や仕事運など一般的なものが多いが、芸能事務所が多い狎鷗亭周辺には芸名の命名専門の占い屋もたくさん軒を連ねている。

このように、エンタメ業界では様々なジンクスが流れ、信じられている。運に身を任せる不確実な日々を送っていると、ジンクスなどに頼りたくなるのかもしれない。

そもそも、韓国の映画・放送業界ではクランクイン前に「告祀(コサ)」と呼ばれる祈祷行事を行う。コサは撮影だけでなく店の開業など、何かを始めるにあたって行われるが、特にエンタメ業界は芸能ニュースなどでも紹介されたりするため有名だ。

日本でも安全祈願が行われるが、韓国と日本とではスタイルが全く異なっている。韓国の告祀は、テーブルに並んだ様々なお供え物と一緒に、茹でた豚の頭が備えてあり、その口元へ出演者スタッフがお金を差し込み厄払いをするという、ビジュアル的にもなかなかインパクトがあるイベントだ。厄払いが終わるとそのまま宴会となり、豚のお金はその代金の足しにされる。

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