最新記事

日本文化

利他の心に立つ稲盛和夫が活用する京都の日本庭園「和輪庵」

2019年5月21日(火)19時30分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

七代目小川治兵衛については、次の無鄰菴(むりんあん)で詳しく述べますが、和輪庵も小川治兵衛によって作庭されました。東山界隈は普通、西側に居を構えて、東山を借景にする形が多いのですが、和輪庵は、敷地の東側に建てられた西向きの建物から、西側の真如堂や金戒光明寺の丘を望めるようになっています。つまり、真如堂や金戒光明寺(こんかいみょうじ)の文殊堂が、借景として望めるのです。

1980年に京都セラミック(現京セラ)の所有となり、今は京セラの迎賓館として、特別な客を迎える場所となっています。

私は、和輪庵にて京セラのジュエリー展が開催されていた期間に、庭を観る機会を得ました。池泉式なので、庭の真ん中に池が広がり、舟も繰り出せるようになっていますが、意外に池がこぢんまりしているなというのが実感でした。池は、東側に建つ洋館から、北側の和の建物へと繋がっていました。池の手前の芝生地に立つと、美しい景色がまるで絵のようでした。紅葉のときで、モミジと松のコントラストが美しかったです。植栽中心の庭なので、控えめに燈籠や橋が配置されていました。

庭は一周できるので、巡るうちに東山が借景となります。残念ながら、樹々が高く茂り庭からは、永観堂や金戒光明寺を見ることはできませんでしたが、洋館の二階からは、庭越しに借景が望めるのではないでしょうか。

世界貢献のために京都賞を立ち上げ、その受賞者を迎えるために、和輪庵は京セラ迎賓館として、おもてなしの場所となりました。海外から訪れた受賞者は、紅葉の美しい庭の景色に目を奪われることでしょう。利他の心に立つ稲盛は、この庭園の素晴らしさをおもてなしの場所として最大限に活用しているのだと思います。

※第2回:京都を愛したデヴィッド・ボウイが涙した正伝寺の日本庭園
※第3回:三菱財閥創始者・岩崎彌太郎が清澄庭園をこだわって造り上げた理由

gardenbook190521inamori-book.jpg
『一流と日本庭園』
 生島あゆみ 著
 CCCメディアハウス


ニューズウィーク日本版 高市早苗研究
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年11月4日/11日号(10月28日発売)は「高市早苗研究」特集。課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら



今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ドイツ鉱工業生産、9月は前月比+1.3% 予想を大

ビジネス

訂正-独コメルツ銀、第3四半期は予想に反して7.9

ビジネス

リクルートHD、純利益予想を上方修正 米国は求人需

ビジネス

訂正-〔アングル〕米アマゾン、オープンAIとの新規
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 3
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイロットが撮影した「幻想的な光景」がSNSで話題に
  • 4
    NY市長に「社会主義」候補当選、マムダニ・ショック…
  • 5
    「なんだコイツ!」網戸の工事中に「まさかの巨大生…
  • 6
    カナダ、インドからの留学申請74%を却下...大幅上昇…
  • 7
    もはや大卒に何の意味が? 借金して大学を出ても「商…
  • 8
    約500年続く和菓子屋の虎屋がハーバード大でも注目..…
  • 9
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 6
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 9
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 10
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中