最新記事

デザイン

ハーバードの学生から渋谷への提案「雑居ビルで新しい働き方を」

2019年5月21日(火)18時05分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

大規模な再開発が渋谷・東京全体にどんな影響をもたらすか

このプログラムでは都市論のセミナーも行われており、本書の著者であり、2014年のヴェネツィア建築ビエンナーレで日本館コミッショナーを務めた建築キュレーターの太田佳代子氏が、それを受け持っている。

2016年のセミナーは「渋谷の未来」と題され、大規模な都市再開発が渋谷および東京全体にどんなインパクトをもたらすのかというテーマで多角的に取り組むものだった。さまざまな視点から渋谷を観察・リサーチし、専門家の講義を聴き、議論し、自ら考えた対応策を提案する。

渋谷と言えば、日本の若者文化を牽引してきた街であり、今や世界に知られる日本を代表する街のひとつだ。シンボルとも言えるスクランブル交差点はいちばんの観光名所で、昼夜を問わず、世界中からやってきた観光客が驚きの声を上げながら写真に収めている。

その渋谷では現在、「100年に一度」と言われる大規模な再開発が、2027年の完成を目指して進められている。だが、当然のことながら、街のすべてが新しく作り替えられるわけではない。昭和の古い雑居ビルが建ち並んでいる区画もあれば、再開発による空きスペースも多くできているという。

そうした街の様子を直に観察し、渋谷という街がどうやって育ってきたのか、この再開発によってどんな街を目指しているのかといったことを学んだ上で、ハーバードの学生たちは、自らが気付いた問題点の解決策や、さらなる進化のためのアイデアをまとめた。

【参考記事】渋谷の再開発「続々と超高層ビル誕生」の足元で起こる変化

再開発には含まれない中小ビルや雑居ビルに新しい価値を

本書では、その中から太田氏が特に優れたものと視点が面白いものを5つ選んで紹介している。ある学生は、公共スペースの活用法に新たな風を吹き込み、ある学生は、大資本の世界とストリートカルチャーの世界が同居する渋谷に前向きなアイデアを提示している。

エミリー・ブレアが注目したのは、渋谷駅周辺にある中小規模のオフィスビルや雑居ビル。再開発事業には含まれていないそれらの建物を、新しく誕生する超高層ビル群の陰で価値が下がるままの存在にするのではなく、新しい価値を見つけて育てていこう、という発想が出発点だ。

彼女の提案は、そうした建物が多く並ぶエリアを、シェアオフィスやコワーキングスペースといったフレキシブルな働き方(=新しい働き方)を実現する場にすること。ビル単位ではなくエリア全体をそのようにすることで、より大きな相乗効果が生まれることを期待するアイデアだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

モディ首相、トランプ氏と電話会談 印パ停戦の米仲介

ビジネス

日経平均は3日続伸、主力株高い 先物主導との見方も

ワールド

イスラエル・イラン紛争6日目に、トランプ氏「無条件

ワールド

訪日外国人、5月は21%増の369万人 桜シーズン
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:コメ高騰の真犯人
特集:コメ高騰の真犯人
2025年6月24日号(6/17発売)

なぜ米価は突然上がり、これからどうなるのか? コメ高騰の原因と「犯人」を探る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロットが指摘する、墜落したインド航空機の問題点
  • 2
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越しに見た「守り神」の正体
  • 3
    イタリアにある欧州最大の活火山が10年ぶりの大噴火...世界遺産の火山がもたらした被害は?
  • 4
    若者に大不評の「あの絵文字」...30代以上にはお馴染…
  • 5
    ホルムズ海峡の封鎖は「自殺行為」?...イラン・イス…
  • 6
    50歳を過ぎた女は「全員おばあさん」?...これこそが…
  • 7
    【クイズ】「熱中症」は英語で何という?
  • 8
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 9
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?.…
  • 10
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 1
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロットが指摘する、墜落したインド航空機の問題点
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 4
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 5
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタ…
  • 6
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 7
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
  • 8
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?.…
  • 9
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 10
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊の瞬間を捉えた「恐怖の映像」に広がる波紋
  • 4
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 5
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 6
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 7
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 8
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 9
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中