最新記事

ドキュメンタリー

世界一の愛され猫が映画デビュー

投稿写真でブレイクし関連グッズも大人気。変わり猫バブを追った『リル・バブ&フレンズ』

2013年5月24日(金)14時39分
マーロウ・スターン

抗し難い魅力 禅っぽい雰囲気を漂わせるバブはネットの人気者(飼い主のブライダブスキーと) Michael Stewart/Getty Images

 4月のトライベッカ映画祭(ニューヨーク)に出品された『リル・バブ&フレンズ』(監督アンディ・カパー、ジュリエット・アイズナー)は、世界で最もかわいい猫「バブ」の世界を描くとともに、インターネットにおける猫ブームとは何かを考察したドキュメンタリー映画だ。

 バブはちょっと変わった雌猫だ。まず目につくのは子猫のように小さな体だろう。おまけに胴体に比べて足が妙に短いし(おかげで運動は苦手だ)、足の指の数はどこも1本多い。目つきはまるで宇宙人のよう。下あごが未発達で歯が生えていないせいで、小さな舌をいつものぞかせている。そしてキーキー、ゴロゴロ、グーグーなどいろんな変な音を出す。

 飼い主のマイク・ブライダブスキーは、「一風変わっているのは宇宙から地球に墜落してきた猫だからだと言う人もいる」と語る。「インターネットに写真を投稿したら、それだけでみんながバブにほれてしまった」

 バブは2年ほど前、ブライダブスキーの出身地である米インディアナ州ブルーミントンで、物置にいるところをブライダブスキーの友人の恋人の母親に保護された。親猫から乳をもらえなかったため哺乳瓶でミルクを飲ませなければならなかった。

 ある日、友人がバブの写真をブライダブスキーにメールしてきた。友人は既に4匹の猫を飼っていたため、バブの引き取り手を探していたのだ。ブライダブスキーは「あまりのかわさに」ノックアウトされ、友人の家に行った。小さな子猫(当時は生後8週間で170グラムくらいだった)を抱き上げた彼は思わずこう言った。「こんにちは、バブ!」。それ以来、2人は離れられない関係になった。

 バブはブライダブスキーにとってある意味、救いの神となった。「ちょうど厳しい時期だった」と彼は言う。「私はレコーディングスタジオを経営しているが、好きだからできる仕事であってあまり儲かるものじゃない。1カ月みっちり予約が入ったかと思ったら、みんな一斉にキャンセルしてきたんだ。家賃の支払いは6カ月遅れていたし、車も壊れてしまった。ネットオークションでもトラブルに見舞われた」

 周囲からバブの写真をネットに投稿するよう勧められたのは、そんなときだった。「ほかにはいない猫だったから」とブライダブスキーは言う。

 最初の写真が投稿されたのは2011年11月。数日のうちに、ブライダブスキーの元にはバブにほれた人たちからの反響が舞い込むようになった。そして数カ月後には、バブがネットでブームを巻き起こしていると興奮して伝える友人たちからのメールが届くようになった。

 フェイスブックではファンの数が11万を超えた。ファンからの要望に応え、ブライダブスキーはバブのTシャツやカレンダー、トートバッグの制作・販売を始めた。おかげでバブの写真を撮るためのいいカメラも買えたし、たまっていた家賃も精算できた。収益からは動物愛護団体やペットの里親探しセンターへもかなりの寄付をしているとブライダブスキーは言う。

「バブの禅っぽいオーラが写真を通して伝わると、みんなはバブの姿をもっと見たいと考える」と彼は語る。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米10月求人件数、1.2万件増 経済の不透明感から

ワールド

スイス政府、米関税引き下げを誤公表 政府ウェブサイ

ビジネス

EXCLUSIVE-ECB、銀行資本要件の簡素化提

ワールド

米雇用統計とCPI、予定通り1月9日・13日発表へ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【クイズ】アジアで唯一...「世界の観光都市ランキング」でトップ5に入ったのはどこ?
  • 3
    中国の著名エコノミストが警告、過度の景気刺激が「財政危機」招くおそれ
  • 4
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 5
    「韓国のアマゾン」クーパン、国民の6割相当の大規模情…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    「1匹いたら数千匹近くに...」飲もうとしたコップの…
  • 8
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    ゼレンスキー機の直後に「軍用ドローン4機」...ダブ…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 6
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 7
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 8
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 9
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 10
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中