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おバカ巨乳女子大生の偏見にうんざり

ピンクの服にブロンド、小麦色の肌、勉強は二の次……。映画に登場する「ソロリティー・ガール」など実在しない

2009年11月2日(月)15時23分
セーラ・ボール(エンターテインメント担当)

露出優先 映画『ソロリティー・ロウ』には胸の谷間もあらわな女子学生たちが登場する ©soroityrowmovie.com

 9月11日に全米公開されたホラー映画『ソロリティー・ロウ』は、胸の谷間もあらわな若手女優がずらり。でも、ブルース・ウィリスとデミ・ムーアの娘ルーマー・ウィリスや、『ヒルズ』のオードリーナ・パトリッジ以外は誰が誰だかほとんど分からない。

 しかし誰でも知っている重要な脇役がいる。豊胸パッドだ。「私はAカップだから、パッドを入れてBカップのブラを着ける。これでDカップみたいになる」と、出演者の1人ブリアナ・エビガンは語る。「R指定(17歳未満は保護者同伴)の映画だから、映画会社も肌の露出を欲しがる」と、スチュワート・ヘンドラー監督は語っている。「『女の子の胸を出せ』という圧力がかかった」

 別に驚きはしない。彼女たちは映画やテレビではおなじみの「ソロリティー・ガール」だ。ソロリティーとは女子学生社交クラブのこと。金髪で巨乳で肌はいつでも小麦色。服はピンクばかりで、背中にはもちろんサークルのロゴがギリシャ文字で入っている(ソロリティーの名前は大抵2つか3つのギリシャ文字から成る)。勉強は二の次、でも週末の計画はバッチリ。モールで買い物した後バーに立ち寄り、出会ったばかりのフラタニティー(男子学生社交クラブ)の学生のベッドへ──バッシングの最高の標的だ。

 私はソロリティーに入っていたが、そんなイメージどおりの女性は知らない。私の姉妹、母、祖母、大おばもメンバーだった。ソロリティーは女子学生が参加できる数少ない課外活動の1つだった。

 だが彼女たちがキックベースボールをしたり、互いの髪をとかす映画に映画会社のOKは出ない。バービー人形みたいな女子学生がお尻を突き出している映画のほうがマシだ。だからMTVのリアリティー番組『ソロリティー・ライフ』の選考風景はまるで安っぽいミスコンだし、映画『キューティー・バニー』では、人気がなくなってきたソロリティーが元バニーガールのアドバイスで復活する。

違いを打ち出す新ドラマ

「8ドルも払ってソロリティーが学問とかコミュニティーサービスについて語る映画を見たいと思う観客はいない」と、加盟する26のソロリティーに助言・指導する全米社交クラブ会議のジュリー・バークハード会長は言う。「(ソロリティーは)若い女性にとって良い経験になるはずなのに、毎日この種の偏見と戦わなければいけない」

 白人学生のソロリティーだけが偏見の対象ではない。「アルファ・カッパ・アルファ」はワシントンのハワード大学にある最古の黒人ソロリティーだが、スパイク・リー監督の映画『スクール・デイズ』に登場するそのメンバーは、男子学生の腕にぶら下がるヘソ出しルックの女子学生や、男に言いなりのセックスフレンドとして描かれている。

 アフリカ系フラタニティーとソロリティーの歴史を描いた著書『ディバイン・ナイン』の作者ローレンス・ロスは、女性たちが独自の世界を築くグループはどうしても排他的にみられると語る。「(ソロリティーは)女性蔑視の感情のはけ口になりやすい」と、ロスは言う。

 すべての脚本家が安っぽい物語を書くわけではない。オハイオ州のある大学のフラタニティーとソロリティーの学生の姿を描いたドラマ『グリーク』で、ケーブルチャンネルABCファミリーのプロデューサー、パトリック・ショーン・スミスは女性蔑視の表現は避け、明るいタッチで若者たちの心の葛藤を描いた。「違いを打ち出すいいチャンスだと思った」と、スミスは言う。

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