最新記事

教育

中2で起業、高1で母校を買収した女性起業家が考える理想の教育とは

2021年12月5日(日)14時20分
仁禮彩香(TimeLeap代表) ピョートル・フェリクス・グジバチ(プロノイア・グループ代表) *PRESIDENT Onlineからの転載
仁禮彩香

自分に役立つ学びがあるものという観点で仕事をする、と語るTimeLeap代表の仁禮彩香氏  写真提供=TimeLeap


慶應義塾大学総合政策学部に在学中の仁禮彩香さんは、中学2年生のときに教育関連の会社を起業した。なぜ、その若さで起業をしようと思ったのか。エンジェル投資家として仁禮さんを支援するピョートル・フェリクス・グジバチさんが聞いた――。

※本稿は、ピョートル・フェリクス・グジバチ『パラダイムシフト 新しい世界をつくる本質的な問いを議論しよう』(かんき出版)の一部を再編集したものです。

答えを与えられる教育に違和感を覚えた小学生時代

学びの世界でパラダイムシフトを実践してきた人がいます。それが、子どもたちに向けて、「自らの人生を切り拓く力」を育むための教育プログラムを提供する会社TimeLeap代表の仁禮彩香さんです。小学1年生のときに既存の学校教育に疑問を抱き、それ以来、教育のあり方を変えるべく奮闘を続けています。現在の教育は何が問題なのか、自らのミッションとして何を変えようとしているのか、活動の原点にあるものは何なのか。その胸の内を聞いてみました。

ピョートル 「中2で起業、高1で母校を買収した慶應義塾大学生」としてメディアでも最近よく見かけるようになってきました。ただ僕が何と言っても素晴らしいと思うのは、10代という若さで起業したというスター性よりも、むしろ自分のやりたいことを明確に抱いて、そのために周りの大人たちを巻き込んで起業という形で自己実現を成し遂げたという、その根性なんです。僕自身がエンジェル投資家として仁禮さんを支援し続けているのは、そこが理由です。

仁禮 私が最初に教育に興味を抱いたのは小学生のときです。幼稚園は、先生が生徒たちに質問でコミュニケーションをとるという方針のインターナショナルスクールに通っていたので、「考える」ことが生活の日常でした。ところが、地元の小学校に上がると、「教科書に書いてあるものが答えです」「先生が言っていることが答えだよ」と、答えを与えられるようになって、そのギャップに違和感を覚えたのです。それが「教育って何?」「学校って何だろう」と考えるようになったきっかけでした。

教育は「人生の時間をどう使うか」に大きく作用する

仁禮 私結局、その小学校に通い続けるのは厳しいと考え、幼稚園の園長に「小学校をつくってくれませんか」と直談判したところ、有難いことになんと1年でつくってくれたのでそこに通うようになって。当初は1期生6人だけの学校だったので、「どうやったら学びがつくれるの?」「みんなで成長するってどういうこと?」「そもそも学校って何で行くの?」ということをみんなで一緒に考えながら学校をつくっていきました。

中学は、日本の教育をもっと知りたいという思いから、あえて一般の学校に通いました。そこで抱いた違和感や物足りなさを自分の学びとして、最初に起業したのが中学2年のとき。自分で会社を経営し、社会勉強をしながら、新しい教育のあり方を事業を通して社会に提案したいと考えたのです。

以降ずっと、社会に足りていない教育は何か、どういう学びの形をとれば小中高生くらいの子たちにいちばんいい形で作用するのかといったことを常に考え、勉強し、実験しながら、教育の仕組みに関心を持ち続け、主体的に関わっています。教育は、若い時期に長く関わるものなので、良くも悪くも、限られた人生の時間をどう使うかに対して大きく作用してしまいますよね。どうせ影響を与えるなら、より良い影響を与える教育の仕組みをつくれたらいいなと思って、取り組み続けています。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

ヘグセス長官の民間アプリ使用は問題、「米軍危険に」

ワールド

EU、レアアース不足対策などで経済安保ドクトリン策

ワールド

中国外相、対日姿勢で仏に支持要請 台湾巡り

ワールド

米地区連銀総裁、最低3年地元居住を選任要件に=ベセ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇気」
  • 2
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与し、名誉ある「キーパー」に任命された日本人
  • 3
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させられる「イスラエルの良心」と「世界で最も倫理的な軍隊」への憂い
  • 4
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国…
  • 5
    【クイズ】日本で2番目に「ホタテの漁獲量」が多い県…
  • 6
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 7
    台湾に最も近い在日米軍嘉手納基地で滑走路の迅速復…
  • 8
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 9
    トランプ王国テネシーに異変!? 下院補選で共和党が…
  • 10
    トランプ支持率がさらに低迷、保守地盤でも民主党が…
  • 1
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 2
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 3
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 4
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 5
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 6
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 7
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 8
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 9
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 10
    子どもより高齢者を優遇する政府...世代間格差は5倍…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 4
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 5
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 6
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 7
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 8
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中